システム・運用#91
RFフィルタ設計 — バンドパス・ノッチフィルタの近似理論とトポロジ
ダイプレクサや前段フィルタが、なぜあの遮断特性を実現できるのか。Butterworth・Chebyshev・楕円関数という3つの近似方式の数式的な違い、集中定数と分布定数設計の使い分け、結合共振器フィルタのトポロジを一般論として学ぶ。
前提知識: Sパラメータと2端子対網理論 — 進行波と反射波で高周波回路を記述する、探査機RFフロントエンド設計 — ダイプレクサと冗長系が支える1機の通信システム
この回で学ぶこと
探査機RFフロントエンド設計の回では、ダイプレクサという回路が「送信アーム」と「受信アーム」という2つの帯域通過フィルタ(BPF)からできていること、そしてそのアイソレーションと挿入損失がチェビシェフ型フィルタの次数 とトレードオフの関係にあることを見ました。しかしあの回では「なぜチェビシェフ多項式を使うのか」「他にどんな設計方式があるのか」「そもそもGHz帯であの回路をどう物理的に作るのか」には踏み込みませんでした。
この回では視点をダイプレクサという1つの応用例から引き上げ、RFフィルタ設計そのものの一般論を扱います。具体的には次の3つを数式で押さえます。
- 近似関数の選び方: 理想的な「壁のような」遮断特性は物理的に実現不可能なので、現実のフィルタは何らかの多項式・有理関数で近似します。Butterworth(最大平坦)、Chebyshev(通過域等リプル)、楕円関数(Cauer)(通過域・阻止域両方に等リプル)という3方式が、同じ次数でどれだけ違う遮断特性を作れるかを比較します。
- 集中定数 vs 分布定数: 低い周波数ではコイルとコンデンサを組んだLC回路網でフィルタを作れますが、GHz帯では部品の物理サイズが波長に対して無視できなくなり、伝送線路の共振器を使う「分布定数設計」に切り替える必要が出てきます。その境目がどこにあるかを数式で確認します。
- バンドパスとノッチの設計思想の違い: 「特定の帯域だけを通す」フィルタと「特定の帯域だけを阻止する」フィルタは、要求仕様も回路トポロジも鏡写しの関係にあります。両者の設計目標の違いと、実際に使われる結合共振器フィルタのトポロジを概観します。
最後に、これらの理論が探査機のダイプレクサや地上局の前段フィルタの実務要求(挿入損失・帯域幅・遮断特性のトレードオフ、隣接周波数帯の他システムへの干渉防止)にどうつながるかを見ていきます。
直感的導入
理想的なバンドパスフィルタを絵に描けと言われたら、多くの人は矩形(レンガのような形)を描くでしょう。通過帯域では振幅が完全に1(0 dB)、その外側では瞬時にゼロ(無限大の減衰)になる特性です。しかし、これは実現不可能です。フィルタは有限個の物理素子(コイル・コンデンサ・共振器)しか持たず、素子数(=次数)が有限である以上、伝達関数は有理多項式で表され、有理多項式は連続関数ですから、通過域から阻止域へは必ずなだらかに遷移します。
ここで設計者が直面する現実的な問題は、「与えられた個数の素子(共振器)を使って、その”なだらかさ”をどこまで急峻にできるか」です。これはさらに2つの下位問題に分かれます。
- 近似関数の問題: 有限次数の伝達関数で、通過域の平坦さと遮断域の急峻さをどう配分するか。通過域に多少の凸凹(リプル)を許せば、同じ素子数でも遮断特性を急峻にできる、というトレードオフがあります。
- 物理実装の問題: 決まった伝達関数を、実際にどんな回路(コイル・コンデンサの塊か、金属の棒や導波管の共振器か)で実現するか。これは周波数が上がるほど「部品の大きさが波長に対して無視できるかどうか」という物理的な制約に支配されます。
前回のダイプレクサの例で言えば、「次のチェビシェフフィルタで90 dBのアイソレーションを得た」という結果は、まさにこの2つの問題(近似関数にチェビシェフを選んだこと、実装に導波管空胴共振器という分布定数構造を選んだこと)の産物でした。この回では、その選択の背後にある一般論を掘り下げます。
数式定式化
近似関数(1): Butterworth — 最大平坦特性
規格化された角周波数 (通過帯域端を とする)に対して、次のローパスフィルタの振幅二乗特性を最も素朴に近似する方式が Butterworth(バターワース)近似です。
この関数の特徴は、 での振幅の に関する導関数が、 次まですべてゼロになることです。つまり通過帯域の中心付近において、振幅特性が可能な限り「平ら」になるように作られています。これが「最大平坦(maximally flat)」と呼ばれる所以です。
一方でButterworth特性は通過域から阻止域への遷移が比較的緩やかです。(通過帯域端)ではどんな次数でも必ず (−3 dB)を通り、そこから先は に従って減衰していきます。dB表示では
となり、前回チェビシェフフィルタで見たのと同じ「減衰量が次数 に比例して急峻になる」という漸近的なふるまいが現れます。
近似関数(2): Chebyshev — 通過域等リプルで急峻さを稼ぐ
Butterworthは通過帯域内の平坦さを最優先しますが、実務では「通過帯域内に多少のリプル(振幅の波打ち)があっても構わないから、その分だけ遮断特性を急峻にしたい」という要求がしばしば勝ります。これに応えるのが Chebyshev(チェビシェフ)近似です。
は 次のチェビシェフ多項式で、通過帯域 の中では と の間を振動する( という定義から従う性質)ため、 も と の間を等振幅で振動します。これが「通過域等リプル(equiripple)」の名の由来で、リプルの大きさは定数 で自由に決められます。
阻止域()では が急激に増大するため()、同じ次数 でもButterworthより遥かに急峻に減衰します。これは直感的には、「通過帯域内で振幅がわずかに波打つことを許容した分の”自由度”を、遮断特性の急峻化に回している」と理解できます。
この2方式のどちらが与えられた仕様(通過帯域端でのリプル dB、阻止帯域端 での最小減衰量 dB)を満たすのに何次必要かは、それぞれ次の式で見積もれます。
両式の分子はほぼ同じ量(必要な減衰比)を表しますが、分母が ( のオーダーで緩やかに増加)か (こちらのほうが大きな値を取りやすい)かという違いにより、同じ仕様でも となるのが通常です。つまり同じ遮断性能を、より少ない共振器数(=より低い挿入損失・より小さな筐体)で実現できるという点が、通信機器の設計でChebyshevが好まれる最大の理由です。
近似関数(3): 楕円関数(Cauer)フィルタ — 通過域・阻止域の両方にリプルを許す
Butterworthは通過域のみを平坦に保ち、Chebyshevは通過域だけにリプルを許容しました。この発想をさらに一歩進め、阻止域にもリプルを許容することで、同じ次数でさらに急峻な遷移特性を得るのが 楕円関数フィルタ(elliptic filter, Cauerフィルタ) です。
ここで は楕円有理関数(Chebyshev有理関数とも呼ばれる)で、 は選択度パラメータです。この関数の最大の特徴は、Chebyshev多項式 が阻止域で単調に増大し続ける(=伝達零点がすべて に集まっている)のに対し、 は阻止域の有限の周波数に複数の伝達零点(振幅が完全にゼロ、つまり減衰が無限大になる点)を持つことです。
この違いが遷移域の急峻さに直結します。同じ通過域リプル 、同じ阻止域最小減衰 、同じ次数 という条件で3方式を比較すると、必要な遷移帯域幅(通過帯域端から、 の減衰を達成する周波数までの距離)は
という順に狭くなっていきます。言い換えれば、同じ次数で最も急峻な遷移(=最も選択度の高いフィルタ)を実現できるのが楕円関数フィルタです。次数の見積もりは第1種完全楕円積分 を用いた
という関係式で与えられ、先ほどのButterworth・Chebyshevの式と同じ入力(, , )から次数を見積もれます。ただし阻止域にもリプルを許すぶん群遅延特性(位相の直線性)はChebyshevよりさらに悪化するため、実務では「急峻さ」と「波形の歪みにくさ(群遅延平坦性)」を天秤にかけ、テレメトリ信号のように波形品質が重要な用途では次数を抑えたChebyshev、限られた周波数間隔で強い干渉源を落とす必要がある用途では楕円関数、というように使い分けられます。
集中定数設計から分布定数設計へ
ここまでの近似関数は、いずれも規格化されたローパスプロトタイプとして与えられます。実際のバンドパスフィルタを作るには、ローパスプロトタイプの素子値 (教科書に表として掲載されている無次元の規格化値)を、比帯域幅 ( は通過帯域の幾何中心角周波数)を使った周波数変換
でバンドパス形に写像します。この変換によって、ローパスプロトタイプの直列インダクタ は直列共振する 回路に、シャント・コンデンサ は並列共振する 回路に姿を変えます。低い周波数(たとえば数百MHz以下)では、この ・ を実際に巻き線コイルとチップコンデンサとして実装する集中定数(lumped element)設計がそのまま成立します。
しかし周波数が上がるにつれて、この前提が崩れていきます。集中定数素子の理論(キルヒホッフの電圧則・電流則)は、素子の物理サイズが信号の波長に比べて十分小さく、素子内のどこでも電流・電圧の位相が瞬時に等しいとみなせることを暗黙の前提としています。目安として、素子サイズが波長の 程度を超えると、この前提が崩れ始めます。
具体的にXバンド( GHz)で確認してみましょう。自由空間波長は
mmです。巻き線インダクタやチップコンデンサの実際の寸法(数mm程度)は、すでにこの目安に迫るか超えており、コイルの巻き線間に生じる寄生容量や、コンデンサのリード線がつくる寄生インダクタンスが、設計値からの無視できないズレを生みます。さらに深刻なのは、素子自体が意図しない周波数で自己共振してしまい、設計者が想定した理想的なL(またはC)としてふるまう周波数範囲がごく狭くなることです。
そこで高周波では、集中定数素子の代わりに伝送線路の一部を共振器として使う分布定数(distributed element)設計に切り替えます。たとえば特性インピーダンス の伝送線路を、波長の4分の1の物理長
で切り出し、一端を短絡すると、この線路片は共振周波数 近傍で並列(または直列)共振回路と等価にふるまいます( は誘電体の実効比誘電率 を考慮した管内波長)。同様に半波長線路や、複数の線路を電磁的に結合させた構造(結合線路)も共振器として使えます。分布定数素子は「線路の長さ」という、フォトリソグラフィや精密機械加工で高い再現性を持って作り込める物理量で共振周波数を規定できるため、GHz帯では集中定数よりむしろ精度・再現性の面で有利になります。前回のダイプレクサの数値例で無負荷Q値 という高い値が使われていたのも、これが巻き線コイルではなく導波管空胴という分布定数構造の共振器だったからです。
結合共振器フィルタのトポロジ
実際のバンドパスフィルタは、ローパスプロトタイプの素子1個1個を独立した共振器に対応させ、隣り合う共振器同士を弱く電磁結合させた結合共振器フィルタ(coupled-resonator filter)として実装されるのが一般的です。個の共振器を持つフィルタの設計パラメータは、各共振器間の結合係数 と、入出力ポートに接続される第1・第共振器の外部Q値 で表され、ローパスプロトタイプの素子値 と比帯域幅から
という関係式で直接計算できます。設計者は、これらの目標値 ・・ を実現する物理的な共振器間隔・結合窓の寸法・給電位置を電磁界シミュレーションや実測で追い込む、という手順でフィルタを完成させます。代表的な実装トポロジには、平行に並べた複数の短絡スタブを結合させるコムライン(combline)フィルタ、指を組むように配置したインターディジタル(interdigital)フィルタ、印刷基板上でU字型に折り返した共振器を並べるヘアピン(hairpin)フィルタなどがあり、いずれも本質的には同じ結合共振器の理論に従っています。
バンドパスとノッチ(帯域阻止)の設計目標の違い
ノッチフィルタ(帯域阻止フィルタ, band-stop/band-reject filter) は、バンドパスフィルタとちょうど鏡写しの関係にあります。バンドパスフィルタが「通過帯域では低損失、それ以外では強い減衰」を目指すのに対し、ノッチフィルタは「阻止したい狭い帯域(あるいは単一の妨害周波数)だけを強く減衰させ、それ以外の広い帯域では信号をほとんど損なわない」ことを目指します。
数式的には、ローパスプロトタイプからバンドストップ形への周波数変換は、バンドパス変換の逆数を取った形
で与えられます。この変換では素子の役割がバンドパスの場合と入れ替わり、ローパスプロトタイプの直列インダクタは並列共振回路をシャント接続したものに、シャント・コンデンサは直列共振回路を直列接続したものになります(バンドパス変換では逆に、直列インダクタが直列共振回路に、シャントコンデンサが並列共振回路になったのと対照的です)。
単一の共振器だけで作る最も単純なノッチフィルタ(反射型トラップ)では、共振周波数における減衰の深さは、共振器の無負荷Q値 と外部結合Q値 の比で決まり、近似的に
という関係が成り立ちます。(共振器の損失が非常に小さい)ほどこの比は1に近づき減衰は浅くなる一方、 が に近づくほど分母がゼロに近づき、理論上は無限大の減衰(完全な打ち消し)が得られます。つまりノッチフィルタの深さを稼ぐには、共振器そのものの無負荷Q値を高く保ちながら、外部結合を注意深く追い込む必要があるという、バンドパスフィルタとは異なる設計上の勘所があります。バンドパスフィルタでは複数の共振器を結合させて遮断特性の急峻さを稼ぎましたが、ノッチフィルタでも同様に複数の共振器を縦続することで、単一のディップだけでなく広い阻止帯域や、より深く平坦な阻止特性を作ることができます。
実務での使われ方
探査機ダイプレクサの設計要求
前回見たように、探査機のダイプレクサはXバンドで挿入損失0.2〜0.5 dB程度、アイソレーション90 dB前後という要求を、比較的低い次数(程度)のChebyshevフィルタで満たしていました。これは、アップリンク・ダウンリンクの周波数間隔がそもそも広く取られている(正規化オフセット が大きい)ことに助けられた結果でした。もし将来、限られたスペクトルの中で送受信周波数をより近接させる必要が生じれば、同じアイソレーションを得るために必要な次数が増え、挿入損失も増加します。そのような場合には、同じ次数でより急峻な遷移特性を持つ楕円関数フィルタや、通過帯域内での群遅延の悪化を抑えるために線形位相補償を組み込んだ設計が検討されることになります。
地上局の前段フィルタと隣接周波数帯保護
地上局の受信チェーンでも、LNAの手前には必ず帯域制限フィルタが置かれます。その主目的の1つは、トランスポンダの回やAWGN雑音モデリングの回で扱った受信感度そのものの確保に加え、隣接する周波数帯を使う他システムへの干渉防止です。国際電気通信連合(ITU)の無線通信規則(Radio Regulations)は、深宇宙探査・宇宙研究業務(Space Research Service)に割り当てられた周波数帯(Xバンド下り8400–8450 MHz、上り7145–7190 MHzなど)を規定しており、その近傍には移動体衛星業務や地球探査衛星業務など、他の無線業務にも周波数が割り当てられています。特にXバンド下りに隣接する1400–1427 MHz帯(水素の21cm線)などは電波天文業務のために国際的に厳重に保護されており、地上局・探査機側の送信機はスプリアス発射(意図しない帯域外放射)の許容レベルがITU-R勧告SM.329などで厳しく規定されています。前段フィルタの遮断特性の急峻さは、このスプリアス放射の抑圧量に直結するため、設計時には近傍業務との周波数間隔と要求される保護レベルから、必要なフィルタ次数を先ほどの設計式で逆算する、という手順が踏まれます。
さらに近年は、地上局周辺の商用無線システム(たとえば携帯電話網の基地局が使う周波数帯)からの相互変調・帯域外放射が、宇宙研究業務の受信帯域に漏れ込む事例が世界的に問題になっており、NASAのDSN(Deep Space Network)や欧州のESTRACKといった大型地上局アンテナでは、LNAの手前に急峻な遮断特性を持つ狭帯域バンドパスフィルタや、特定の妨害周波数を狙い撃ちするノッチフィルタを追加することで、この種の地上系RFI(Radio Frequency Interference)から超微弱な深宇宙信号を守る対策が取られています。DSN Telecommunications Link Design Handbook(810-005)でも、フロントエンド系統に組み込まれるフィルタのアイソレーション・挿入損失の仕様が、リンクバジェットの一項目として明記されています。
演習問題
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通過帯域リプル dB、阻止帯域端 における最小減衰量 dB という仕様を満たすフィルタを設計したい。本文の式を使って、(a) Butterworth近似で必要な次数 、(b) Chebyshev近似で必要な次数 、をそれぞれ計算し、両者を比較してください。次数が整数でない場合は、要求仕様を満たす最小の整数に切り上げること。
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中心周波数 GHz、通過帯域幅 MHz のバンドパスフィルタを設計する。(a) 比帯域幅 を計算してください。(b) 実効比誘電率 の伝送線路上に、この中心周波数で共振する 長の短絡スタブ共振器を作るとき、必要な物理長 をミリメートル単位で求めてください。
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あるバンドパスフィルタを、ローパスプロトタイプ素子値 (のChebyshevフィルタの例)、比帯域幅 で結合共振器フィルタとして実装したい。本文の式を用いて、結合係数 と、外部Q値 を計算してください。
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単一共振器のノッチフィルタにおいて、無負荷Q値 、外部結合Q値 のとき、共振周波数でのノッチ深さを本文の近似式で計算してください。また、 を に近づけていくとノッチ深さがどう変化するか、式の構造から説明してください。
まとめと次回予告
この回では、前回のダイプレクサで登場したChebyshevフィルタを出発点に、RFフィルタ設計の一般論を扱いました。Butterworth(最大平坦)・Chebyshev(通過域等リプル)・楕円関数(通過域・阻止域両方に等リプル)という3つの近似方式は、同じ次数でも遷移帯域の急峻さがこの順で改善していくこと、そしてそのぶん群遅延特性は悪化していくというトレードオフを見ました。また、GHz帯では部品サイズが波長に対して無視できなくなるため集中定数設計から分布定数(伝送線路共振器)設計への切り替えが必要になること、バンドパスフィルタとノッチフィルタが周波数変換上は鏡写しの関係にあり、結合共振器フィルタという共通の枠組みでどちらも設計できることを確認しました。最後に、これらの理論が探査機ダイプレクサの挿入損失・アイソレーションのトレードオフや、地上局が隣接周波数帯の他システム(電波天文業務や商用無線システム)からの干渉を防ぐための実務要求にどうつながっているかを見ました。
次回は、これらのフィルタの先に置かれるLNA(低雑音増幅器)の性能を、実際の測定でどう検証するのかという 雑音指数の実測(Y-factor法) に軽く触れます。データシート上のスペックではなく、実機を使ってLNAの雑音温度・雑音指数を校正された雑音源から実測する手法です。
参考文献
- D. M. Pozar, Microwave Engineering, 4th ed., Wiley, 2011(フィルタ近似理論・バンドパス/バンドストップ周波数変換の標準的教科書)
- J.-S. Hong, M. J. Lancaster, Microstrip Filters for RF/Microwave Applications, Wiley, 2001(結合共振器フィルタの設計理論)
- G. L. Matthaei, L. Young, E. M. T. Jones, Microwave Filters, Impedance-Matching Networks, and Coupling Structures, Artech House, 1980
- S. B. Cohn, “Dissipation Loss in Multiple-Coupled-Resonator Filters,” Proceedings of the IRE, vol. 47, no. 8, pp. 1342–1348, 1959
- ITU Radio Regulations, Article 5(周波数分配表)および ITU-R Recommendation SM.329(スプリアス発射の許容レベル)
- CCSDS 401.0-B, Radio Frequency and Modulation Systems, Part 1: Earth Stations and Spacecraft
- DSN Telecommunications Link Design Handbook, DSN No. 810-005