測距・追跡#31

光学航法 — 電波ではなく、搭載カメラで自分の位置を測る

地上局との電波のやり取りで距離・速度・角度を測る電波航法に対し、探査機自身が搭載カメラで近傍天体や恒星背景を撮像し、自分の位置と軌道を推定する光学航法(OPNAV)を扱う。ピンホールカメラの幾何学、スタートラッカーの原理、視差による距離推定、そして片道光行時間の長い電波航法に対して終端誘導で光学航法が有利になる理由を数式で追う。

前提知識: radiometric-navigation

光学航法スタートラッカー視差自律航法終端誘導

この回で学ぶこと

前回までに扱ってきたレンジング・ドップラー計測・DDORといった技術は、いずれも「地球の地上局から探査機に電波を送り、その反射・応答を観測することで、探査機の距離・速度・角度を求める」という共通の構図を持っていました。これらを総称して**電波航法(radiometric navigation)**と呼びます。電波航法は地球という巨大で安定した観測基盤(高安定発振器、大口径アンテナ、地球規模の基線)を使えるという強みがあり、深宇宙探査機の軌道決定の主力であり続けてきました。

しかし電波航法には、原理的に避けられない弱点があります。電波は光速で伝わるため、探査機が地球から遠く離れるほど、あるいは探査機が目標天体のすぐ近くで素早い判断を要する局面ほど、地上局に頼った制御は「間に合わない」ものになっていきます。この回では、電波航法とは対照的な発想、すなわち**探査機自身が搭載カメラで近傍の天体(小惑星・彗星・衛星など)や背景の恒星を撮像し、その画像だけから自分の位置・姿勢・軌道を推定する光学航法(Optical Navigation, OPNAV)**を扱います。

具体的には、(1) カメラの焦点距離とピクセルサイズから、画像上の1点がどれだけの角度分解能を持つかというピンホールカメラの基本幾何、(2) 既知の恒星カタログとのパターンマッチングによって姿勢を決定するスタートラッカーの原理、(3) 探査機の移動にともなう近傍天体の見かけの位置変化(視差)から距離を推定する三角測量的な手法、そして(4) 電波の片道遅延時間を定量的に評価することで、なぜ終端誘導(タッチダウンやフライバイの直前など)では光学航法が電波航法より本質的に有利なのかを、順を追って数式で確認していきます。

直感的導入 — 電波の「目」から、探査機自身の「目」へ

電波航法では、探査機はいわば受け身の立場です。地上局が電波を送り、探査機がそれをトランスポンダで折り返し、地上局がその往復時間や位相のズレを解析して、初めて「探査機がどこにいるか」が分かります。この一連のやり取りには、地球と探査機の間を電波が往復するのに要する時間、すなわち**光行時間(light time)**がまるまる乗ってしまいます。

光学航法はこの構図を逆転させます。探査機は自分の目(カメラ)で、近くにある小惑星や彗星、あるいは遠くの恒星を直接見ます。恒星は天球上の位置が実質的に不動とみなせるほど遠方にあるため、恒星を基準にすれば探査機の姿勢(自分がどちらを向いているか)が分かります。一方、近傍の小惑星や彗星のような「近い」天体は、探査機自身が動くとその見かけの方向が変化する(視差)ため、これを利用すれば探査機から目標天体までの距離や、目標天体に対する自分の相対位置を求めることができます。

この2つを組み合わせれば、探査機は地球との通信を一切待たずに、「自分が目標天体に対してどこにいて、どちらを向いているか」を自己完結的に(自律的に)知ることができます。これは、地球からの電波が届くまでに数分から数十分を要するような遠方ミッションや、目標天体への接近・着陸のように状況が秒単位で変化する局面において、決定的な意味を持ちます。

数式による定式化

ピンホールカメラモデルと角分解能

探査機搭載カメラの多くは、レンズ系を理想化したピンホールカメラモデルでよく近似できます。焦点距離 ff のレンズ(あるいは反射光学系)によって、ボアサイト(光軸)方向から角度 α\alpha だけ傾いた方向にある点光源は、焦点面(撮像素子)上でボアサイトの結像点(主点)から距離

x=ftanαx = f\tan\alpha

だけ離れた位置に結像します。撮像素子のピクセルピッチ(1画素の物理的な大きさ)を pp とすると、この結像点はピクセル数にして x/px/p 画素だけ主点からズレます。逆にいえば、撮像素子上で主点から (uu0,vv0)(u-u_0, v-v_0) 画素だけ離れた位置に検出された点(ここで (u0,v0)(u_0,v_0) は主点のピクセル座標)は、焦点面座標に直すと (x,y)=((uu0)p, (vv0)p)(x,y) = \big((u-u_0)p,\ (v-v_0)p\big) であり、その方向を表すカメラ座標系での視線方向単位ベクトルは

s^cam=1x2+y2+f2(xyf)\hat{s}_{\text{cam}} = \frac{1}{\sqrt{x^2+y^2+f^2}}\begin{pmatrix} x \\ y \\ f \end{pmatrix}

と書けます。これが光学航法のあらゆる幾何学の出発点になる式で、「画像上のどこに何が写っているか」を「探査機から見てその天体・恒星がどの方向にあるか」という3次元の視線方向ベクトルに変換しています。

角度が小さい範囲では tanαα\tan\alpha \approx \alpha なので、1ピクセルのズレに対応する角度、すなわち**瞬時視野角(Instantaneous Field of View, IFOV)**は

ΔαIFOV=pf\Delta\alpha_{\text{IFOV}} = \frac{p}{f}

というシンプルな式で与えられます。これがそのカメラの理論的な角分解能の下限です。ただし実際には、点像ではなく面積を持つ天体(恒星や小惑星の輝度分布)の中心位置を、複数ピクセルにまたがる輝度分布の重心(セントロイド)として計算することで、ΔαIFOV\Delta\alpha_{\text{IFOV}} よりもさらに細かいサブピクセル精度(良好な条件では0.1ピクセル、あるいはそれ以下)で天体の中心方向を決定できます。この重心決定精度が、後述する視差測定やスタートラッカーの姿勢決定精度を直接左右します。

スタートラッカーによる姿勢決定

恒星は探査機から見て実質的に無限遠にあるとみなせるため、恒星への視線方向は探査機の位置にはよらず、探査機の姿勢(向き)だけで決まります。この性質を使って探査機の姿勢を決定する装置が**スタートラッカー(Star Tracker, STT)**です。

原理は次の通りです。カメラが撮った1枚の画像から、前節の式を使って検出された恒星それぞれのカメラ座標系での視線方向単位ベクトル s^icam\hat s_i^{\text{cam}} を求めます。ここで、2つの恒星 i,ji,j の間の角距離 θij\theta_{ij} は、それぞれの視線方向ベクトルの内積から

cosθij=s^icams^jcam\cos\theta_{ij} = \hat{s}_i^{\text{cam}} \cdot \hat{s}_j^{\text{cam}}

として計算できます。この角距離は、探査機がどの姿勢で恒星を見ていようと変わらない、いわば恒星ペアの「指紋」です。地上であらかじめ恒星カタログ(位置が高精度に既知の何千〜何万個もの恒星のリスト)から、すべての恒星ペアの角距離を計算してデータベース化しておけば(k-vector探索などの高速な検索構造がよく使われます)、画像中で観測された角距離のパターンをこのデータベースと照合するだけで、「今画像に写っている恒星が、カタログ上のどの恒星に対応するか」を、あらかじめ探査機の姿勢についての事前情報なしに特定できます。これはロスト・イン・スペース(lost-in-space)アルゴリズムと呼ばれる手法です。

いったん2つ以上の恒星についてカメラ座標系での視線方向 s^icam\hat s_i^{\text{cam}} と、カタログが与える慣性座標系(天球基準系)での視線方向 r^i\hat r_i との対応が得られれば、両者を結びつける姿勢(回転)行列 AA を求める問題、いわゆるWahbaの問題

J(A)=12iwir^iAs^icam2  minAJ(A) = \frac{1}{2}\sum_i w_i \left\| \hat{r}_i - A\, \hat{s}_i^{\text{cam}} \right\|^2 \ \longrightarrow\ \min_A

を解くことで、探査機の姿勢(通常はクォータニオンで表現)が決定されます。この最小化問題はQUESTやTRIADといった効率的なアルゴリズムで実時間処理でき、実運用のスタートラッカーは数秒角(arcsec)程度の姿勢決定精度を、1秒未満の更新周期で継続的に出力します。姿勢決定そのものは電波航法には無い機能であり、光学航法の重要な副産物です(実際、多くの探査機は光学航法専用ではなく姿勢制御用のセンサとしてスタートラッカーを常時搭載しています)。

視差による距離推定

恒星が「無限遠」とみなせるのに対し、近傍の小惑星や彗星、衛星といった目標天体は探査機からの距離が有限であるため、探査機自身が移動すると、その見かけの方向(視線方向)がわずかに変化します。これが**視差(パララックス)**です。

探査機の軌道上の2つの位置 r1,r2\vec r_1, \vec r_2 で目標天体を撮像したとします。両位置を結ぶ基線ベクトル L=r2r1\vec L = \vec r_2 - \vec r_1 のうち、目標天体への視線方向にほぼ直交する成分を LL_\perp とすると、2枚の画像から測定される視線方向の見かけの変化角(視差角)Δθ\Delta\theta と、目標天体までの距離 dd の間には、幾何学的に

Δθarctan ⁣(Ld)\Delta\theta \approx \arctan\!\left(\frac{L_\perp}{d}\right)

という関係が成り立ちます。dLd \gg L_\perp(基線が距離に比べて十分短い)のときは小角近似が使え、

dLΔθd \approx \frac{L_\perp}{\Delta\theta}

として距離を直接求めることができます。これは恒星の年周視差から距離を求める天文学の古典的な手法と原理的にまったく同じで、電波航法が地上局間の基線を使ったのに対し、光学航法では探査機自身の軌道運動が生み出す基線を利用している点が対照的です。

測定誤差の伝播も同様に評価できます。d=L/Δθd = L_\perp/\Delta\thetaΔθ\Delta\theta で微分すると dd/d(Δθ)=L/Δθ2=d2/Ldd/d(\Delta\theta) = -L_\perp/\Delta\theta^2 = -d^2/L_\perp なので、視差角の測定誤差を σΔθ\sigma_{\Delta\theta} とすると、距離の推定誤差は

σdd2LσΔθ\sigma_d \approx \frac{d^2}{L_\perp}\,\sigma_{\Delta\theta}

で与えられます。この式から、基線 LL_\perp を長く取れるほど、また距離 dd が近いほど、視差による距離推定は高精度になることが分かります。逆に目標天体が遠方にあるうちは視差角が小さすぎて精度が出ず、光学航法による距離推定は主に接近運用(プロキシミティ運用)以降で威力を発揮します。

電波航法との相補性: 光の片道遅延と終端誘導

ここまでの議論から、光学航法は「探査機自身が完結して自分の状態を知る」技術であることが分かりました。では、なぜわざわざ電波航法と使い分ける必要があるのでしょうか。その答えは光速の有限性にあります。

距離 dd を隔てた地球と探査機の間で電波(あるいは光)が伝わるのに要する片道の時間、**片道光行時間(one-way light time)**は

tLT=dct_{\text{LT}} = \frac{d}{c}

で与えられます。1AU1.496×1011m1\,\text{AU} \approx 1.496\times10^{11}\,\text{m}c2.998×108m/sc \approx 2.998\times10^8\,\text{m/s} なので、

tLT(1AU)=1.496×10112.998×108499 s8.3 分t_{\text{LT}}(1\,\text{AU}) = \frac{1.496\times10^{11}}{2.998\times10^{8}} \approx 499\ \text{s} \approx 8.3\ \text{分}

が「1天文単位あたりの片道光行時間」の目安です。探査機が地球から d=2.5AUd = 2.5\,\text{AU} 程度離れた位置で小惑星への接近運用を行っているとすると、片道光行時間はおよそ 2.5×8.320.82.5\times 8.3 \approx 20.8 分、地上からコマンドを送りその結果のテレメトリを受け取るまでの往復遅延はその2倍、およそ42分にもなります(地上系・探査機系それぞれの処理時間を含めればさらに長くなります)。

この遅延が終端誘導(小惑星表面へのタッチダウン、彗星核への接近フライバイなど)にとってどれほど致命的かを、具体的な数値で見てみましょう。終端降下時の相対接近速度を v0.08 m/sv \approx 0.08\ \text{m/s} 程度(タッチダウン直前の低速降下フェーズを想定した目安の値)とすると、往復遅延 Δtdelay2tLT1996 s\Delta t_{\text{delay}} \approx 2t_{\text{LT}} \approx 1996\ \text{s} の間に探査機が実際に移動してしまう距離は

ΔxvΔtdelay0.08 m/s×1996 s160 m\Delta x \approx v \cdot \Delta t_{\text{delay}} \approx 0.08\ \text{m/s} \times 1996\ \text{s} \approx 160\ \text{m}

にも達します。典型的な小惑星の直径がたかだか数百m〜1km程度であることを踏まえると、地上からの1コマンドが届く間に探査機の位置は目標天体の大きさに匹敵するほど「古く」なってしまうことになります。これでは地上局がリアルタイムに探査機を操縦することは物理的に不可能であり、着陸精度の要求(通常は数m〜数十mのオーダー)を満たすことも到底できません。

これに対して、探査機が搭載カメラで目標天体を秒単位(あるいはそれ以下)の周期で撮像し、その場で画像処理から自分の相対位置・姿勢を推定し、そのままオンボードの誘導制御則にフィードバックする閉ループの光学航法であれば、光行時間の制約を一切受けずに、実時間に近い応答でガイダンスを行えます。つまり、電波航法は地球規模の基線と長時間の蓄積によって高精度な軌道決定(巡航フェーズ)を担い、光学航法は光行時間に縛られない即応性によって終端誘導(近接運用フェーズ)を担うという、時間スケールに応じた明確な役割分担がここに成立しているわけです。

実務での使われ方

光学航法の実運用は、大きく「地上で画像を処理して軌道決定を補強する古典的な使い方」と「探査機上で自律的に処理してリアルタイムに誘導する使い方」の2系統に分かれます。

地上処理による軌道決定の補強。 木星・土星探査機がその衛星への接近軌道を精密に決めるため、恒星背景に対する衛星の撮像画像を地球にダウンリンクし、地上で画像処理して衛星の見かけの位置を天文暦(エフェメリス)と比較する、という手法はボイジャーやガリレオの時代から使われてきた、光学航法のもっとも古典的な形態です。この手法では光行時間の遅延は問題にならず、レンジ・ドップラーだけでは得にくい視線直交方向の精度を補うという意味で、電波航法(とりわけDDOR)と目的を共有しています。

探査機上での自律光学航法(AutoNav)。 NASA/JPLのDeep Space 1(1998年打上げ)は、小惑星・彗星への接近運用において、探査機自身が撮像した恒星背景と近傍天体の画像から、地上の介入なしに自分の軌道を推定し軌道修正を行うAutoNavシステムを世界で初めて実証しました。この技術はその後、Stardust(彗星ヴィルト第2核へのサンプルリターン)やDeep Impact(彗星テンペル第1核への衝突機投下)など、後続の彗星・小惑星ミッションに継承されています。

終端誘導への応用。 JAXAのはやぶさはやぶさ2は、小惑星イトカワ・リュウグウへのタッチダウン運用において、望遠光学航法カメラ(ONC-T)と広角カメラ(ONC-W1/W2)、さらにレーザー高度計(LIDAR)やレーザーレンジファインダ(LRF)、探査機から投下した反射性のターゲットマーカーを組み合わせた自律降下誘導を行いました。地上からの光行時間が往復で数十分に達する状況下で、探査機はターゲットマーカーや天体表面の特徴点を画像内で追跡し続け、秒オーダーの制御周期で自律的に降下・タッチダウンを実行しています。米国のOSIRIS-RExも、小惑星ベンヌへのタッチアンドゴー(TAG)サンプル採取において、あらかじめ構築しておいたベンヌの高精度3次元形状モデルとリアルタイムのカメラ画像を照合するNatural Feature Tracking (NFT) アルゴリズムを用いて、降下中の自己位置推定と危険地形(大きな岩塊など)の自律回避を実現しました。

遠方フライバイでの活用。 太陽系外縁部を航行したNew Horizonsの冥王星フライバイでは、地球からの片道光行時間が4.5時間にも達するため、接近運用でのリアルタイム地上制御は原理的に不可能でした。搭載カメラ(LORRI)による冥王星・カロンと恒星背景の撮像を使った光学航法によって、フライバイ直前の軌道を自律的かつ精密に把握し、限られた探査機資源(バッテリ・通信帯域)の中で最大の科学成果を得られるよう、あらかじめ設計されたシーケンスに沿った運用が行われました。

演習問題

  1. あるOPNAV用カメラの焦点距離が f=200 mmf = 200\ \text{mm}、撮像素子のピクセルピッチが p=5.5 μmp = 5.5\ \mu\text{m} であるとき、1ピクセルに対応する瞬時視野角(IFOV)をマイクロラジアンおよび秒角(arcsec)単位で求めよ。さらに、探査機が目標天体から高度 15 km15\ \text{km} でこのカメラを使う場合、1ピクセルが天体表面上でカバーするおおよその空間分解能をメートル単位で求めよ。

  2. スタートラッカーの画像中で検出された2つの恒星の焦点面座標(ピクセル単位、主点からのオフセット)が (u1u0,v1v0)=(120,45)(u_1-u_0, v_1-v_0) = (120, -45)(u2u0,v2v0)=(80,60)(u_2-u_0, v_2-v_0) = (-80, 60) [pixel] で与えられ、焦点距離 f=25 mmf = 25\ \text{mm}、ピクセルピッチ p=15 μmp = 15\ \mu\text{m} とする。それぞれのカメラ座標系での視線方向単位ベクトル s^1cam,s^2cam\hat s_1^{\text{cam}}, \hat s_2^{\text{cam}} を求め、cosθ12=s^1cams^2cam\cos\theta_{12} = \hat s_1^{\text{cam}} \cdot \hat s_2^{\text{cam}} から2星間の角距離 θ12\theta_{12} を計算せよ。

  3. 探査機が小惑星に接近する軌道上で、間隔 Δt=600 s\Delta t = 600\ \text{s} をおいて撮影した2枚の画像から、目標天体の視差角 Δθ=3.0 mrad\Delta\theta = 3.0\ \text{mrad} が観測された。この間の探査機の視線直交方向の移動量(基線長)が L=45 mL_\perp = 45\ \text{m} であった場合、目標天体までの距離 dd を求めよ。また視差角の測定誤差が σΔθ=0.05 mrad\sigma_{\Delta\theta} = 0.05\ \text{mrad} であるとき、距離の誤差 σdd2σΔθ/L\sigma_d \approx d^2\sigma_{\Delta\theta}/L_\perp を評価せよ。

  4. 探査機が地球から d=2.0 AUd = 2.0\ \text{AU} 離れた小惑星近傍で終端誘導(タッチダウン)運用を行っているとする。(a) 片道光行時間 tLTt_{\text{LT}} を分単位で求めよ。(b) 地上からのコマンドが届くまでの往復遅延 Δtdelay2tLT\Delta t_{\text{delay}} \approx 2t_{\text{LT}} を求めよ。(c) 終端降下時の相対接近速度が v=0.08 m/sv = 0.08\ \text{m/s} であるとき、地上ループでの制御を仮定した場合に生じる位置のズレ ΔxvΔtdelay\Delta x \approx v\,\Delta t_{\text{delay}} を求め、小惑星の代表的なサイズ(直径約1km)と比較しながら、なぜ終端誘導には自律的な搭載光学航法が不可欠なのかを、この回で学んだ内容をもとに論じよ。

まとめと次回予告

光学航法は、電波航法が地球という巨大な観測基盤を使って探査機を「外から」測るのに対し、探査機自身が搭載カメラという「目」を持つことで自分の状態を「内から」知る技術です。ピンホールカメラの幾何学によって画像上の1点が視線方向ベクトルへと変換され、それが恒星カタログとのパターンマッチングによる姿勢決定(スタートラッカー)や、探査機自身の軌道運動を基線とする視差による距離推定へとつながっていきます。そして何より、光速で決まる片道光行時間という電波航法の根本的な制約を持たないことが、小惑星タッチダウンや彗星核フライバイのような終端誘導の局面で光学航法が不可欠となる、定量的にも明確な理由でした。

次回は、電波航法の話題に戻り、探査機が受信・送信する電波の周波数(ドップラーシフト)そのものを科学的な測定量として使う重力科学とドップラー計測に軽く触れます。これまで軌道決定の手段として扱ってきたドップラー計測が、惑星や衛星の重力場、さらには一般相対性理論の検証といった科学目的にも直接応用できることを見ていきます。

参考文献

  • W. M. Owen Jr., “Methods of Optical Navigation,” AAS 11-215, AAS/AIAA Space Flight Mechanics Meeting
  • J. E. Riedel et al., “Configuration of the Deep Space 1 Autonomous Navigation System,” Jet Propulsion Laboratory
  • C. C. Liebe, “Accuracy Performance of Star Trackers — A Tutorial,” IEEE Transactions on Aerospace and Electronic Systems, Vol. 38, No. 2
  • Y. Tsuda et al., “Hayabusa2 Mission Overview,” Space Science Reviews, Vol. 208
  • D. S. Lauretta et al., “OSIRIS-REx: Sample Return from Asteroid (101955) Bennu,” Space Science Reviews, Vol. 212
  • J. R. Wertz (ed.), Spacecraft Attitude Determination and Control, Kluwer Academic Publishers
  • J. R. Wertz, D. F. Everett, J. J. Puschell (eds.), Space Mission Engineering: The New SMAD