システム・運用#89

インピーダンス整合とスミスチャート — 反射をゼロに近づける幾何学

反射係数Γを最小化する『整合』を、複素平面上の図式操作として一瞬でこなすツールがスミスチャート。z平面からΓ平面への双一次変換の導出から、定抵抗円・定リアクタンス円の幾何学、L型整合回路の設計手順までを追う。

前提知識: 伝送線路理論とVSWR — アンテナと送受信機をつなぐケーブルの物理

スミスチャートインピーダンス整合反射係数L型整合回路メビウス変換

この回で学ぶこと

前回、伝送線路上で負荷インピーダンス ZLZ_L が特性インピーダンス Z0Z_0 と一致していないとき、信号の一部が反射して戻ってくること、そしてその大きさを反射係数

Γ=ZLZ0ZL+Z0\Gamma = \frac{Z_L - Z_0}{Z_L + Z_0}

という複素数で表せることを見ました。Γ|\Gamma| が大きいほどVSWRが悪化し、送信機からアンテナへ届けられるはずの電力の一部が反射で無駄になり、最悪の場合は反射波が送信機自体に戻って増幅器を損傷させることさえあります。

この回のテーマは、その Γ\Gamma を可能な限りゼロに近づける作業、すなわち**インピーダンス整合(impedance matching)**です。そして整合回路を設計するときにRF技術者が今なお日常的に使っている道具が、一見すると謎めいた同心円と弧が重なり合う図——**スミスチャート(Smith Chart)**です。この回では、スミスチャートが単なる「便利な図」ではなく、複素インピーダンス平面を反射係数平面へ写す厳密な数学的変換(双一次変換、メビウス変換)の産物であることを、式を追って導出します。そのうえで、なぜ定抵抗円・定リアクタンス円という幾何学的な構造が生まれるのか、そしてその構造を使ってどうやって整合回路を設計するのかを理解します。

直感的導入: なぜ整合が必要か、なぜ図で考えたいのか

探査機の送信機は、決まった特性インピーダンス Z0Z_0(多くの場合 50Ω50\,\Omega)で信号を出力するように設計されています。その先につながるアンテナや増幅器の入力インピーダンス ZLZ_L が、周波数によって、あるいは物理的な設計上の制約によって、必ずしも 50Ω50\,\Omega ぴったりにはならないのが実情です。アンテナの給電点インピーダンスは形状や周波数に依存して複雑に変化しますし、トランジスタの入出力インピーダンスも動作周波数ごとに大きく変わります。

このミスマッチを解消するために、送信機と負荷の間に**整合回路(matching network)**と呼ばれる、コイルやコンデンサ(あるいは伝送線路のスタブ)を組み合わせた小さな回路を挿入します。整合回路の役割は、負荷側から回路を見たインピーダンスを操作し、送信機側から見たときにちょうど Z0Z_0 に見えるようにする、つまり反射係数をゼロに近づけることです。

ここで問題になるのが設計の手間です。素子を1つ足すたびにインピーダンスは複素数のまま複雑に変化し、暗算や単純な代数だけで「あと何をどれだけ足せば整合するか」を追いかけるのは非常に骨が折れます。そこで20世紀前半、当時ベル研究所のエンジニアだったフィリップ・スミス(Phillip H. Smith)が考案したのが、複素インピーダンス空間での操作を、反射係数平面上の円弧に沿った幾何学的な移動に翻訳してしまうという発想です。これがスミスチャートです。素子を足すという代数的な操作が、チャート上では「ある円に沿って弧を描くように点を動かす」という視覚的な操作に置き換わり、整合回路の設計が驚くほど直感的になります。

数式定式化: z平面からΓ平面への双一次変換

正規化インピーダンスの導入

まず、扱う複素インピーダンス Z=R+jXZ = R + jX を、系の特性インピーダンス Z0Z_0 で正規化します。

zZZ0=r+jx,r=RZ0,  x=XZ0z \equiv \frac{Z}{Z_0} = r + jx, \qquad r = \frac{R}{Z_0},\ \ x = \frac{X}{Z_0}

正規化することで、Z0=50ΩZ_0 = 50\,\Omega の系でも Z0=75ΩZ_0 = 75\,\Omega の系でも同じ1枚のチャートを使い回せるようになります。これがスミスチャートが特定のインピーダンス値に縛られない汎用ツールである理由です。

反射係数の定義(前回導出済み)を正規化インピーダンスで書き直すと、

Γ=ZZ0Z+Z0=z1z+1\Gamma = \frac{Z - Z_0}{Z + Z_0} = \frac{z - 1}{z + 1}

というシンプルな形になります。スミスチャートとは、この式が定める複素z平面から複素Γ平面への写像を、Γ平面側にすべて描き込んだ図に他なりません。

逆変換とΓ平面上の単位円

この式は zz について解くことができ、

z=1+Γ1Γz = \frac{1 + \Gamma}{1 - \Gamma}

という逆変換が得られます。ここで物理的に意味のある負荷、すなわち受動素子(抵抗・コイル・コンデンサの組み合わせ)でできた負荷は、エネルギーを生成しない限り実部が非負でなければなりません。

r=Re(z)0r = \operatorname{Re}(z) \ge 0

この条件が Γ\Gamma 平面上でどの領域に対応するかを確認しましょう。Γ=u+jv\Gamma = u + jv とおいて z=(1+Γ)/(1Γ)z = (1+\Gamma)/(1-\Gamma) の実部を計算すると、

r=Re ⁣(1+Γ1Γ)=1u2v2(1u)2+v2r = \operatorname{Re}\!\left(\frac{1+\Gamma}{1-\Gamma}\right) = \frac{1 - u^2 - v^2}{(1-u)^2 + v^2}

となり、r0r \ge 0 という条件は分子が非負であること、すなわち

u2+v21Γ1u^2 + v^2 \le 1 \quad \Longleftrightarrow \quad |\Gamma| \le 1

に対応します。つまり、あらゆる受動負荷(r0r \ge 0)は、必ずΓ平面の単位円の内部(または境界上)に写像されるわけです。逆に Γ>1|\Gamma| > 1 となる点は、r<0r < 0 の負性抵抗、つまり増幅作用を持つ能動素子に対応します。この単位円がスミスチャートの外枠そのものです。境界上(Γ=1|\Gamma|=1)は r=0r=0、つまり純粋なリアクタンス(無損失負荷)に対応し、これは前回学んだ「全反射」の条件——反射波の振幅が入射波と等しい状態——と一致しています。

変換の性質: 円は円に写る(双一次変換の一般論)

Γ=(z1)/(z+1)\Gamma = (z-1)/(z+1) という形の変換は、複素解析の言葉で双一次変換(bilinear transformation)、あるいは**メビウス変換(Möbius transformation)**と呼ばれる、

w=az+bcz+d(adbc0)w = \frac{az+b}{cz+d} \qquad (ad - bc \ne 0)

の特別な場合(a=1, b=1, c=1, d=1a=1,\ b=-1,\ c=1,\ d=1、これは adbc=20ad-bc=2\neq0 を満たす)です。メビウス変換には重要な一般的性質があります。z平面上の任意の直線または円は、変換後のΓ平面上でも直線または円に写される、という性質です(直線は「半径無限大の円」とみなせば、この性質は「円は円に写る」という一文にまとめられます)。

スミスチャートの美しさは、まさにこの性質から生まれます。z平面上でもっとも単純な図形である「rr が一定の垂直線」「xx が一定の水平線」の集まりが、Γ平面では有限の半径を持つ円の集まりに姿を変えるのです。次節でこれを具体的に導出します。

定抵抗円と定リアクタンス円の導出

z=r+jxz = r + jxΓ=u+jv\Gamma = u + jv とおいて、Γ=(z1)/(z+1)\Gamma = (z-1)/(z+1) を実部・虚部に分解します。

Γ=(r1)+jx(r+1)+jx=[(r1)+jx][(r+1)jx](r+1)2+x2\Gamma = \frac{(r-1) + jx}{(r+1) + jx} = \frac{\big[(r-1)+jx\big]\big[(r+1)-jx\big]}{(r+1)^2 + x^2}

分子を展開すると (r1)(r+1)+x2+j[x(r+1)x(r1)]=(r21+x2)+j(2x)(r-1)(r+1) + x^2 + j\big[x(r+1) - x(r-1)\big] = (r^2 - 1 + x^2) + j(2x) なので、

u=r2+x21(r+1)2+x2,v=2x(r+1)2+x2u = \frac{r^2 + x^2 - 1}{(r+1)^2 + x^2}, \qquad v = \frac{2x}{(r+1)^2 + x^2}

定抵抗円 (rr = 一定)

rr を固定して xx を動かしたときに (u,v)(u,v) がどんな軌跡を描くかを見るため、uu の式を整理します。

u[(r+1)2+x2]=r2+x21u\big[(r+1)^2+x^2\big] = r^2+x^2-1 u(r+1)2+ux2=r21+x2x2(u1)=r21u(r+1)2u(r+1)^2 + ux^2 = r^2 - 1 + x^2 \quad\Longrightarrow\quad x^2(u-1) = r^2-1-u(r+1)^2

これを u,vu,v について整理し直す(標準的な計算なので結果のみ示します)と、

(urr+1)2+v2=(1r+1)2\left(u - \frac{r}{r+1}\right)^2 + v^2 = \left(\frac{1}{r+1}\right)^2

という、見事な円の方程式が得られます。すなわち正規化抵抗 rr が一定の直線 Re(z)=r\operatorname{Re}(z)=r は、Γ平面上で

  • 中心: (rr+1, 0)\left(\dfrac{r}{r+1},\ 0\right)
  • 半径: 1r+1\dfrac{1}{r+1}

の円に写されます。r=0r=0(純リアクタンス、無損失負荷)のとき中心 (0,0)(0,0)・半径 11 となり、これがスミスチャートの外周(単位円)そのものです。rr が大きくなるにつれて円は中心 (1,0)(1,0) に向かってどんどん小さく収縮していき、rr\to\infty(開放、オープン)の極限で点 Γ=1\Gamma=1 に潰れます。これが**定抵抗円(constant resistance circle)**の族で、すべて実軸上の点 Γ=1\Gamma=1 で互いに接しています。

定リアクタンス円 (xx = 一定)

同様に xx を固定して rr を動かした場合を計算すると、

(u1)2+(v1x)2=(1x)2(u-1)^2 + \left(v - \frac{1}{x}\right)^2 = \left(\frac{1}{x}\right)^2

が得られます。正規化リアクタンス xx が一定の直線 Im(z)=x\operatorname{Im}(z)=x は、Γ平面上で

  • 中心: (1, 1x)\left(1,\ \dfrac{1}{x}\right)
  • 半径: 1x\left|\dfrac{1}{x}\right|

の円(の弧)に写されます。これらの円もすべて点 Γ=1\Gamma=1 を通ります。x>0x>0(誘導性、コイル的)の弧は上半分(v>0v>0)に、x<0x<0(容量性、コンデンサ的)の弧は下半分に描かれ、x=0x=0(純抵抗)は半径無限大の円、すなわち実軸そのものに退化します。これが**定リアクタンス円(constant reactance circle)**の族です。ただし単位円の外側は物理的に意味を持たない(r<0r<0)ため、実際のチャートでは単位円の内部の弧だけが描かれます。

この2種類の円弧群——定抵抗円(すべて実軸上で接する同心円状の族)と定リアクタンス円(すべて Γ=1\Gamma=1 を通る弧の族)——を単位円の中に重ねて描いたものが、スミスチャートのあの特徴的な図柄です。チャート上のどの点も、その点を通る定抵抗円のラベル rr と定リアクタンス円のラベル xx を読み取るだけで、正規化インピーダンス z=r+jxz=r+jx が直ちに分かります。逆に、zz から Γ\Gamma を求めたいときも、対応する2本の円弧の交点を見つけるだけで済みます。式 Γ=(z1)/(z+1)\Gamma=(z-1)/(z+1) を毎回計算する必要がなく、すべての情報が1枚の図の上に幾何学的に埋め込まれている、というのがこのチャートの本質的な価値です。

整合回路設計の基本操作: 素子を足すとチャート上でどう動くか

スミスチャートが実務で真価を発揮するのは、整合回路の素子を1つずつ追加していく過程を、チャート上の点の移動として追跡できるという点です。ここで鍵になるのは、素子を負荷に対して直列に足すか並列に足すかで、動き方がまったく異なるという事実です。

直列素子: 定抵抗円に沿って動く

負荷インピーダンス zLz_L に、直列にリアクタンス jxsjx_s(コイルなら xs>0x_s>0、コンデンサなら xs<0x_s<0)を追加すると、合成インピーダンスは

znew=zL+jxs=(rL)+j(xL+xs)z_{\text{new}} = z_L + jx_s = (r_L) + j(x_L + x_s)

となり、実部 rLr_L は変化せず、虚部だけが加算されます。したがってチャート上では、この操作は元の点を通る定抵抗円に沿って上下に(コイルなら上へ、コンデンサなら下へ)移動することに対応します。直列インダクタンスは点を時計回りに(誘導性方向、上半平面へ)、直列キャパシタンスは反時計回りに(容量性方向、下半平面へ)動かします。

並列素子: 定コンダクタンス円に沿って動く

一方、並列(シャント)にサセプタンス jbpjb_p を追加する場合は、インピーダンスのままでは計算が煩雑になるため、正規化アドミタンス y=1/z=g+jby = 1/z = g+jb を使うのが定石です。並列接続はアドミタンスの単純な足し算になるからです。

ynew=yL+jbp=(gL)+j(bL+bp)y_{\text{new}} = y_L + jb_p = (g_L) + j(b_L + b_p)

こちらはコンダクタンス gLg_L が変化せず、サセプタンスだけが加算されるという、直列の場合と双対の関係にあります。この操作をΓ平面上で行うには、アドミタンスチャート(インピーダンスチャートを原点中心に180°回転させたもの、これは zy=1/zz\to y=1/zΓΓ\Gamma \to -\Gamma に対応するという性質から来ています)を重ねて使い、定コンダクタンス円に沿って移動させます。

実務では、1枚のスミスチャート上に定抵抗円(インピーダンス用)と定コンダクタンス円(アドミタンス用、インピーダンス用の円を180°回転させた形)の両方を重ねて印刷した「イミッタンスチャート」を使い、直列素子を足すときはそのまま定抵抗円上を、並列素子を足すときはチャート全体を180°回転させたつもりで定コンダクタンス円上を動かす、という操作を頭の中で(あるいは実際に紙の上で)行います。

L型整合回路の設計手順

もっとも基本的な整合回路は、リアクタンス素子2個(直列1個・並列1個、あるいはその逆)からなるL型整合回路です。設計の考え方は次の通りです。

  1. 負荷の正規化インピーダンス zLz_L(あるいはアドミタンス yLy_L)をチャート上にプロットする。
  2. 目標は Γ=0\Gamma=0、つまりチャートの中心(z=1z=1、正規化インピーダンスがちょうど 1+j01+j0)にたどり着くことである。中心を通る定抵抗円は r=1r=1 の円、中心を通る定コンダクタンス円は g=1g=1 の円である。
  3. まず1つ目の素子(直列または並列)を選び、zLz_L の点を、r=1r=1 の円(直列素子を足す場合)または g=1g=1 の円(並列素子を足す場合)と交わるまで、対応する円に沿って動かす。この交点は一般に2つ存在し、コイルを使うかコンデンサを使うかで到達する交点が変わる。
  4. その交点に到達したら、2つ目の素子(1つ目とは逆に直列⇔並列)を選び、今度はその点から中心 z=1z=1(あるいは y=1y=1、両者はチャート上の同じ点)まで、残りの弧を動かして到達する。

こうして「r=1r=1 円または g=1g=1 円まで動かす素子」と「そこから中心まで動かす素子」という2段階の操作で、任意の負荷(単位円の内部にある限り)を理論上は整合できます。どちらの円に先に乗せるか(直列を先にするか並列を先にするか)によって設計は複数通り存在し、実際にはこの自由度を使って、整合回路の帯域幅特性や、使用する素子の値が現実的な範囲(製造可能なインダクタンス・キャパシタンスの値)に収まるかどうかを比較検討します。

実務での使われ方

スミスチャートは今日でもRFエンジニアリングの共通言語として使われ続けています。

  • アンテナ整合回路の設計: 探査機の高利得アンテナ(HGA)や地上局の給電系は、目的の周波数帯(Sバンド、Xバンド、Kaバンドなど)でインピーダンスが 50Ω50\,\Omega からずれることがあり、給電点近傍にスタブや集中定数素子による整合回路を挿入して反射損失を最小化します。スミスチャート上で整合経路を検討し、素子値の当たりをつけるのが伝統的な設計フローです。
  • 増幅器の入出力整合: 低雑音増幅器(LNA)やTWTA・進行波管増幅器の入出力段では、トランジスタや真空管のインピーダンスが周波数依存で複雑に変化するため、最大電力伝送や最小雑音指数を実現する整合回路の設計にスミスチャートが使われます。特にLNAでは、雑音指数を最小化する最適ソースインピーダンス Γopt\Gamma_{opt} をチャート上にプロットし、それと電力整合点との折り合いをつける設計判断が行われます。
  • 現代の設計環境: 現在では**ベクトルネットワークアナライザ(VNA)**でデバイスのSパラメータ(次回のテーマです)を実測し、Keysight ADSやAWR Microwave Officeといった回路シミュレータが最適な整合回路を自動的に探索してくれます。数値最適化がボタン一つで走る時代になった今でも、これらのソフトウェアのグラフィカルユーザーインターフェースには必ずスミスチャート表示が組み込まれています。理由は、素子を1つ追加するたびにインピーダンスがどちらの方向にどれだけ動くかを技術者が直感的に把握でき、最適化アルゴリズムが出した答えが物理的に妥当かどうかを検算できるからです。数値計算がすべてを解いてくれる時代でも、幾何学的な直感を与えるツールとしてのスミスチャートの価値は失われていません。
  • VSWRとの対応: チャート上で原点からの距離 Γ|\Gamma| は、前回学んだ VSWR =(1+Γ)/(1Γ)=(1+|\Gamma|)/(1-|\Gamma|) と1対1に対応するため、多くのスミスチャート(特にプリント版)には原点を中心とした同心円としてVSWRの目盛りが併記されており、整合の良し悪しをチャート上で直接読み取れるようになっています。

演習問題

  1. 正規化負荷インピーダンス zL=2+j1z_L = 2 + j1 について、反射係数 Γ=(zL1)/(zL+1)\Gamma = (z_L-1)/(z_L+1) を複素数の形で計算し、Γ|\Gamma| とVSWRを求めてください。
  2. 本文で導出した定抵抗円の公式 (urr+1)2+v2=(1r+1)2\left(u-\dfrac{r}{r+1}\right)^2+v^2=\left(\dfrac{1}{r+1}\right)^2r=1r=1 を代入し、円の中心と半径を求めてください。この円が原点(整合点 Γ=0\Gamma=0)を通ることを確認してください。
  3. ある負荷の正規化アドミタンスが yL=0.5j0.5y_L = 0.5 - j0.5 であるとする。これに並列にサセプタンス +j0.5+j0.5 の素子(キャパシタ)を追加すると、合成アドミタンスはいくらになるか。そのアドミタンスに対応する正規化インピーダンス z=1/yz=1/y を求め、この操作でインピーダンスが整合点(z=1z=1)に近づいたかどうかを議論してください。
  4. 直列にリアクタンスを追加する操作はチャート上で定抵抗円に沿った移動になり、並列にサセプタンスを追加する操作は定コンダクタンス円に沿った移動になる理由を、それぞれの操作がインピーダンス表示・アドミタンス表示のどちらで単純な足し算になるかに触れながら、自分の言葉で説明してください。

まとめと次回予告

この回では、伝送線路上の反射係数 Γ\Gamma をゼロに近づける「整合」という作業を、複素インピーダンス平面から反射係数平面への双一次変換 Γ=(z1)/(z+1)\Gamma=(z-1)/(z+1) という数学的な写像として理解しました。この変換のもとで、単純な直線群(定抵抗線・定リアクタンス線)が円弧群(定抵抗円・定リアクタンス円)に姿を変えるという性質こそが、スミスチャートを単なる便利な図から厳密な計算ツールへと押し上げています。そして直列素子は定抵抗円に沿って、並列素子は定コンダクタンス円に沿って点を動かすという規則を使えば、L型整合回路の設計を幾何学的な操作として組み立てられることも見ました。

ここまで反射係数 Γ\Gamma を1つの周波数・1つのポートに対する量として扱ってきましたが、実際のRF回路(増幅器やフィルタ、方向性結合器など)は複数のポートを持ち、入力と出力の間で信号がどう伝わり反射するかを記述する必要があります。次回は、この考え方を多端子回路に拡張する Sパラメータと2端子対網理論 を扱い、S11,S21,S12,S22S_{11}, S_{21}, S_{12}, S_{22} という4つの複素数が、反射(スミスチャートで見てきた Γ\Gamma の一般化)と伝送特性の両方をどう記述するのかに触れます。

参考文献

  • P. H. Smith, Electronic Applications of the Smith Chart, 2nd ed., Noble Publishing
  • D. M. Pozar, Microwave Engineering, 4th ed., Wiley
  • G. Gonzalez, Microwave Transistor Amplifiers: Analysis and Design, 2nd ed., Prentice Hall
  • DSN Telecommunications Link Design Handbook, DSN No. 810-005