変調・符号化#120
コンステレーションシェーピング — 均一配置に潜む1.53dBの無駄を取り戻す
APSK・QAMの均一な信号点配置が、シャノン限界に対してなぜ常に約1.53dB損をしているのかを、一様分布とガウス分布のエントロピー差から導出する。幾何学的シェーピングと確率的シェーピング(PAS)という2つの解決策を、光通信・DVB-S2Xの実例とともに理解する。
前提知識: APSK — 高次変調と非線形増幅器を両立させる同心円配置、シャノンの通信路容量定理 — どれだけ送れるかを決める絶対的な壁
この回で学ぶこと
APSKの回では、多値PSK・多値QAM・APSKという信号点配置(コンステレーション)を比べ、平面をフルに使うQAMがPSKより点間距離の劣化に強いこと、そしてTWTAの非線形性に対応するためにAPSKという同心円配置が生まれたことを見ました。しかしそこで扱った配置は、いずれも「信号点を等間隔に並べ、どの点も等確率で使う」という意味で**均一(uniform)**な配置でした。
シャノンの通信路容量定理の回では、AWGN通信路の容量 を、送信信号が平均電力制約のもとでどれだけの情報を運べるかという観点から導きました。この容量を実際に達成するためには、伝送レート を満たすだけでなく、送信信号そのものの統計的な性質にも条件があります。実は、AWGN通信路の容量を達成する最適な入力信号の確率分布は、一様分布ではなくガウス分布でなければなりません。
ところが、これまで学んできたBPSK・QPSK・16QAM・16APSKといった実際の変調方式は、すべて有限個の信号点を等確率で使います。振幅の大きい信号点も、原点に近い信号点も、出現確率はまったく同じです。この「本当に最適な入力はガウス分布(振幅が大きいほど出現確率が下がる)なのに、実際の変調方式は等確率の均一配置を使っている」というミスマッチが、**シェーピングギャップ(shaping gap)**と呼ばれる、約1.53 dBの避けがたい損失を生みます。
この回では、まずこのシェーピングギャップの正体を、一様分布とガウス分布のエントロピー(情報量)の差として数式で導出し、続いてこのギャップを埋めるための2つのアプローチ — 信号点配置そのものを歪める幾何学的シェーピング(Geometric Shaping)と、配置は均一グリッドのまま使用確率だけを変える確率的シェーピング(Probabilistic Shaping) — を数式とともに紹介します。最後に、これらの技術が実際にどこで使われているのかを、DVB-S2Xや現代の光通信システムの数値とともに確認します。
直感的導入 — 均一配置は「四角い部屋に人を詰め込む」ようなもの
なぜ等確率の均一配置が最適でないのか、まず直感的なイメージで捉えてみましょう。
AWGN通信路の容量を達成する入力分布がガウス分布だという事実は、シャノンの回で見た球充填的な議論と実はぴったり整合します。あの議論では、 次元信号空間の中で、送信信号ベクトルは平均電力制約のもとで原点付近に高い密度で、外側に行くほど低い密度で分布しているときに、単位体積あたりに詰め込める「区別可能な信号点」の数が最大化される、というのが背景にありました。これはまさにガウス分布の性質そのものです — ガウス分布は原点付近の確率密度が高く、外側に行くほど指数関数的に密度が下がっていきます。
これに対して、16QAMや16APSKのような均一配置は、信号点を(同心円やグリッド上で)等確率に敷き詰めます。図形的に言えば、これは正方形や円盤のような「角の立った」あるいは「一様に埋まった」領域いっぱいに信号点を敷き詰めているようなものです。ガウス分布が望む「中心が濃く、外側が薄い」分布とは異なり、均一配置は外側の(エネルギーの大きい)信号点も、中心付近の信号点と同じ頻度で使ってしまいます。
その結果、均一配置は同じ平均送信エネルギーの予算の中で、ガウス入力が達成できるはずの情報量よりも、常にわずかに損をします。この損失は配置のビット数 や具体的な変調方式によらず、高SNR極限では一定の値に収束するという驚くべき性質を持ちます。次節でこれを定量的に求めます。
数式定式化1: 一様分布とガウス分布のエントロピー差
信号空間の1つの実次元(たとえばQAMのI軸)だけを取り出して考えます。振幅レベルが区間 に連続的に一様分布しているとしましょう。これは、APSKの回で導入した値PAMの信号点数 を無限大に近づけた極限に相当します。実際、APSKの回で求めたPAM平均エネルギーの公式
は、点数 が十分大きくなると、全体の広がり を持つ連続一様分布の分散 にそのまま収束していきます。この一様分布の**差分エントロピー(differential entropy)**は、区間の長さの対数として素直に求まります。
一方、同じ分散 を持つガウス分布 の差分エントロピーは、よく知られた公式
で与えられます。情報理論の基本定理により、与えられた分散のもとでエントロピーを最大化する分布はガウス分布であり、それ以外のどんな分布も同じ分散でこれより高いエントロピーを持つことはできません。したがって が常に成り立ち、その差がまさに「均一配置がガウス最適配置に対して失っている情報量」を表します。
対数の中身を整理すると、 の項がきれいに消去されます。
振幅の広がり がどんな値であっても(つまり送信電力がどんな値であっても)、このギャップは常に同じ 約0.255 bit に収まるという点が重要です。これは「一様配置とガウス配置の差」という、変調方式の具体的なエネルギーとは切り離された、純粋に分布の形だけに起因する普遍的な損失なのです。
数式定式化2: 1.53 dBの導出 — レート損失をSNR損失に変換する
前節で求めたのは「情報量(レート)」の差でした。これを、リンク設計でおなじみの「必要 」や「必要SNR」の差に変換してみましょう。
高SNR極限では、AWGN通信路の容量は という、SNRの対数にほぼ比例する形に近づきます(シャノンの回の帯域幅制限領域の議論を参照)。同様に、高SNR極限では相互情報量は近似的に「入力の差分エントロピーから雑音の差分エントロピーを引いたもの」として書けます。
これは、SNRが十分高いとき受信信号 の広がり方が主に送信信号 自身の広がりで決まり、雑音 による「ぼかし」の寄与が相対的に小さくなるためです。ガウス入力の場合はこれがちょうど厳密な容量式 の高SNR近似 と一致します。
したがって、同じ平均電力(同じ分散)のもとで一様入力を使ったときに達成できるレート とガウス入力の容量 の差は、前節で求めたエントロピー差 にそのまま等しくなります。
この「レートの不足分 」を埋めるには、SNRをどれだけ余分に上げればよいでしょうか。高SNR極限で容量曲線 の傾きは、 の変化に対して です。逆に言えば、レートを だけ底上げするには、 を だけ増やす、つまりSNRを 倍する必要があります。
数値を代入すると、
これがシェーピングギャップ(shaping gap)、あるいはシェーピング損失と呼ばれる、有名な約1.53 dBという数値の正体です。「同じ誤り率・同じスペクトル効率を達成するために、均一な信号点配置は、ガウス的に最適な入力分布に比べて、常に約1.53 dB余分な送信エネルギーを必要とする」というのがこの結果の意味です。
重要な点を2つ確認しておきます。第一に、この1.53 dBは変調方式のビット数によらない漸近値です。QAMの をどれだけ大きくしても、均一配置である限りこのギャップは1.53 dBに漸近するだけで、それ以上小さくはなりません。第二に、この導出は高SNR極限(帯域幅制限領域)での近似であり、深宇宙リンクのような低SNRの電力制限領域ではこの近似はそのままでは成り立ちません。これについては後の節で改めて議論します。
幾何学的シェーピング(Geometric Shaping)
シェーピングギャップを埋める第一のアプローチは、信号点配置そのものの形を、ガウス分布の「中心が濃く外側が薄い」という性質に近づけることです。これを幾何学的シェーピング(Geometric Shaping)と呼びます。
具体的には、正方格子QAMや均一APSKのように信号点を等間隔・等半径間隔で並べるのをやめ、次のように配置を歪めます。
- 原点付近には信号点を多く、密に配置する。
- 外側(高エネルギー側)に行くほど、信号点の間隔を広げ、点の密度を下げる。
こうすることで、各信号点は依然として等確率で使われますが、点そのものの空間的な密度分布がガウス分布の確率密度形状を模倣するようになります。直感的には、点の密度を確率密度の代わりに使うことで、「均一に敷き詰められた点群」を「ガウス分布に従って散らばった点群」に近づけているのだと考えられます。
このような非一様な点配置を実際に設計する際の古典的な指針として、量子化理論におけるBennettの高分解能量子化則が参考になります。ある確率密度 を持つ情報源を、個の代表点で平均二乗誤差最小に量子化するとき、最適な代表点密度 (単位長さあたりの点数)は、
に比例することが知られています。これをガウス分布 に当てはめると、点密度は のようにやはり中心が濃く裾が薄い形になり、「外側ほど間隔を広げる」という設計方針を定量的に裏づけます。ただし、これはあくまで平均二乗誤差(量子化誤差)を最小化する基準であり、実際の通信路容量や誤り率(BICM容量)を最大化する意味での最適配置は、この閉じた式では厳密には得られません。実務上は、目標の符号化率・SNR動作点ごとに、信号点座標を数値最適化(勾配法や進化的アルゴリズムによるBICM容量最大化)で求める手法が一般的です。DVB-T2/DVB-C2規格で採用された**非一様コンステレーション(Non-Uniform Constellation, NUC)**は、まさにこの数値最適化によって設計された幾何学的シェーピングの実例です。
幾何学的シェーピングの利点は、送受信機の信号処理アーキテクチャを大きく変えずに済む点にあります。信号点の座標(マッピングテーブル)を非一様なものに置き換えるだけでよく、送信確率は依然として等確率のままなので、ビット列から信号点列を作る変調過程そのものは通常のQAM/APSKと変わりません。欠点は、信号点配置がFEC(誤り訂正符号)の符号化率やSNR動作点ごとに変わってしまうため、多数の動作点をサポートするには、多数の非一様コンステレーションをあらかじめ設計・格納しておく必要があることです。
確率的シェーピング(Probabilistic Shaping, PAS)
第二のアプローチは、信号点配置そのものは通常の均一なグリッド(正方格子QAMなど)のまま変えず、代わりに各信号点が使われる確率を変えるというものです。これを確率的シェーピング(Probabilistic Shaping)、その代表的な実装方式を**Probabilistic Amplitude Shaping(PAS)**と呼びます。
考え方はシンプルです。外側の(振幅が大きい、エネルギーの大きい)信号点ほど使用頻度を下げ、内側の信号点ほど使用頻度を上げれば、信号点配置自体は均一グリッドのままでも、実効的な入力信号の統計的分布はガウス分布に近づけることができます。
数式定式化3: マクスウェル・ボルツマン分布 — 離散点集合上の最大エントロピー分布
この「どのくらい確率を偏らせればよいか」という問いに、数式で厳密な答えを与えることができます。等間隔に並んだ振幅レベル (たとえば 値PAMの信号点)の上に確率分布 を置くとき、平均エネルギー制約 のもとでエントロピー を最大化する分布を求めてみましょう。
ラグランジュの未定乗数法を使うと、制約条件
のもとでのエントロピー最大化問題のラグランジアンは
を解くと、最適解は指数関数の形になることが分かります。
これは統計力学のボルツマン分布と同じ形をしていることからマクスウェル・ボルツマン(Maxwell–Boltzmann)分布と呼ばれます。パラメータ (「逆温度」に相当)を大きくするほど、外側の信号点(が大きい点)の確率は急激に小さくなり、分布全体が原点付近に集中します。 を調整することで、目標の平均エネルギー に対応する分布を自由に作ることができます。
この結果は、前節で行った連続版の議論と完全に対応しています。信号点数 、点間隔 の極限を取ると、離散的なマクスウェル・ボルツマン分布は連続的な確率密度 に収束し、これはまさにガウス分布そのものです。つまりマクスウェル・ボルツマン分布は、「有限個の離散信号点という制約のもとで、ガウス分布に最も近づける」ための最大エントロピー解なのです。均一グリッドという配置を変えずに、確率だけをこのマクスウェル・ボルツマン分布に従わせれば、シェーピングギャップの大部分を回収できることになります。
実際のPAS方式の送信機は、大まかに次のような構成を取ります。
- 分布整合器(Distribution Matcher, DM): 一様独立分布(通常のビット列)を入力として、目標のマクスウェル・ボルツマン分布に従う非一様な振幅シンボル列に変換する。代表的な実装にConstant Composition Distribution Matching (CCDM) がある。
- 系統的誤り訂正符号化: シェーピングされた振幅シンボルに対応するビットと、通常の(一様分布のままでよい)符号ビットとを組み合わせ、LDPC符号などの系統符号で保護する。PASの鍵は、パリティビットには一様分布を保たせたまま、振幅(シェーピングされる部分)と符号(保護される部分)を分離してそれぞれ最適に扱える点にあります。
- 受信側ではこの逆変換(逆分布整合)を行い、シェーピングされたビット列を元の一様なビット列に戻す。
このアーキテクチャは2015年にBöcherer, Steiner, Schulteらによって提案され、既存の系統的LDPC符号化系にほぼそのまま組み込めるという実装上の利点から、確率的シェーピングを実用化する標準的な方式として広く採用されています。
幾何学的シェーピングと確率的シェーピングの定量比較
どちらの手法も、原理的には1.53 dBのシェーピングギャップの大部分を回収できます。実際に報告されている性能を整理すると、次のような傾向があります。
| 手法 | 回収できるシェーピング利得の目安 | 主な制約要因 |
|---|---|---|
| 幾何学的シェーピング(NUC等) | 有限のコンステレーションサイズ・SNR動作点ごとに0.8〜1.2 dB程度 | 動作点ごとに異なる配置が必要、設計の数値最適化コストが高い |
| 確率的シェーピング(PAS) | 1.0〜1.3 dB程度 | 分布整合器の有限ブロック長によるレートロス、実装複雑度 |
いずれの手法も理論限界の1.53 dBに完全には到達しません。これは、この回で導出した1.53 dBという値が「信号点数が無限大」「符号長が無限大」という漸近的な極限での値であるのに対し、実際のシステムは有限の信号点数・有限のブロック長で動作せざるを得ないためです。この「漸近限界と実装上の限界の差」を**有限長シェーピングロス(finite-length shaping loss)**と呼び、現在も符号化・変調の研究分野で活発に扱われているテーマです。それでも1 dB前後の利得は、シャノンの回で見た符号化利得の議論がそうであったように、同じ送信電力でより高いデータレートを得る、あるいは同じデータレートをより小さな送信電力で実現するという、実務上非常に大きな意味を持つ数値です。
シェーピングが効く領域・効かない領域
ここで、シェーピングがどんなリンクで効果を発揮し、どんなリンクでは効果が薄いのかを整理しておきましょう。この回の導出はいずれも高SNR極限(シャノンの回で言う帯域幅制限領域)を前提にしていたことを思い出してください。
高次変調(多値QAM・多値APSK)が使われるのは、まさにこの帯域幅制限領域(受信電力に余裕があり、帯域幅こそが希少資源であるようなリンク)です。APSKの回で見た近地球の高速リンクや、現代の光ファイバー通信のようにスペクトル効率を極限まで高めたいシステムでは、信号点数 が数十〜数百に達し、シェーピングによる1 dB前後の利得がそのままデータレートやリーチ(伝送距離)の向上に直結します。
一方、深宇宙探査機のリンクは電力制限領域で動作しており、多くの場合BPSK・QPSK/OQPSKのような低次変調にとどまります。信号点数が少ない(たとえばBPSKは2点のみ)場合、そもそも「信号点の使用確率を変える」余地がほとんどなく、シェーピングによって回収できる利得も小さくなります。実際、シェーピングゲインの1.53 dBという値そのものが高SNR極限での漸近値であり、深宇宙リンクのように動作点のSNRが低い(電力制限領域に近い)場合には、この近似は成立せず、実際に得られる利得はさらに小さくなります。したがって、コンステレーションシェーピングは今のところ、深宇宙探査機の主変調方式そのものというよりは、近地球の高速リンクや、地上・海底の光通信システムで真価を発揮する技術だと理解しておくのが実務的に正確です。
実務での使われ方
確率的シェーピング(PAS)が最も広く実用化されているのは、コヒーレント光通信の分野です。大陸間を結ぶ海底ケーブルやデータセンター間の長距離伝送(DCI: Data Center Interconnect)では、伝送距離とスペクトル効率のトレードオフをわずかでも改善することが直接的な経済的価値を持つため、PS-QAM(Probabilistically Shaped QAM、たとえばPS-64QAMやPS-256QAM)を採用した商用トランスポンダが、Nokia、Ciena、Infineraなど複数のベンダーから提供されています。これらのシステムでは、確率的シェーピングによって得られる実効SNR利得(概ね0.5〜1 dB程度)が、そのまま伝送可能距離の延伸や、同一距離でのビットレート引き上げに変換されます。また、シェーピングによって振幅の外側の点の使用頻度が下がることは、光ファイバーの非線形歪み(Kerr効果由来の非線形位相雑音)の抑制にも副次的に寄与することが知られており、光通信分野で特に好まれる理由の一つになっています。
幾何学的シェーピングは、地上デジタル放送規格であるDVB-T2(ETSI EN 302 755)やDVB-C2(ケーブル向け)において、非一様コンステレーション(NUC)という形で標準に取り込まれています。BBC Research & DevelopmentやNokia Bell Labsが中心となって、BICM(Bit-Interleaved Coded Modulation)容量を最大化するように数値最適化された16点・64点・256点などの非一様配置が、複数の符号化率ごとに規格の付録として規定されています。
衛星通信規格のDVB-S2X(ETSI EN 302 307-2、DVB-S2の拡張版)では、64APSK・128APSK・256APSKといったさらに高次のAPSK配置が追加されましたが、これらは主として非線形なTWTA耐性と高スペクトル効率の両立を狙ったものであり、この回で扱った意味でのガウス分布近似(シェーピングゲイン回収)を第一の目的とした配置ではない点には注意が必要です。とはいえ、DVB-S2Xのような高効率衛星通信の標準化コミュニティでも、確率的シェーピングを含む次世代の符号化変調方式の検討は継続的に行われており、将来の高効率衛星・深宇宙リンク規格に段階的に取り込まれていく可能性が指摘されています。CCSDSにおいても、LDPC・ターボ符号がシャノン限界に迫ってきた延長線上の技術として、コンステレーションシェーピングを含む先進的な符号化変調方式の研究は続けられていますが、2020年代半ば時点では、APSK自体のようにCCSDS勧告として正式に標準化されたシェーピング方式はまだ存在せず、主に地上の光通信・放送分野で実用化が先行しているのが現状です。
演習問題
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一様分布の差分エントロピー と、同じ分散を持つガウス分布の差分エントロピー から、本文の手順に従って を導出し、 の数値(bit)と、それに対応するSNR損失(dB)を電卓を使って計算してください。
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4値PAM(信号点 )にマクスウェル・ボルツマン分布を適用することを考えます。 のとき、 の式から4つの信号点それぞれの確率(正規化後)を求め、外側の点()と内側の点()の確率の比較から、確率が均一分布(各0.25)からどの程度偏っているかを議論してください。
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本文では、シェーピングゲイン1.53 dBの導出が「高SNR極限」という近似のもとで成り立つと説明しました。シャノンの回で学んだ電力制限領域(低SNR極限、)では、なぜこの高SNR近似 が成り立たなくなるのか、 の形を踏まえて説明してください。またこのことが、深宇宙探査機がBPSK/QPSKを使い続け、コンステレーションシェーピングをほとんど必要としない理由とどうつながっているか、自分の言葉で述べてください。
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幾何学的シェーピングと確率的シェーピングは、それぞれ「信号点配置を変える」「信号点の使用確率を変える」という異なるアプローチを取りますが、どちらも最終的に狙っている効果は同じです。それは何か、この回で学んだガウス分布の役割を踏まえて説明してください。またPAS方式が、幾何学的シェーピング(NUCのような)に比べて、多数の符号化率・SNR動作点をサポートする実装の観点で有利だと考えられる理由を述べてください。
まとめと次回予告
APSK・QAMのような均一な信号点配置は、点間距離や非線形増幅器耐性の観点では優れた設計でしたが、AWGN通信路の容量を達成する最適な入力分布がガウス分布であるという事実に対しては、常に約1.53 dBのシェーピングギャップを抱えていました。この回では、一様分布とガウス分布の差分エントロピーの差からこの1.53 dBという値を導出し、その正体が「等確率にすべての信号点を使う」という均一配置の統計的な形の悪さそのものであることを見ました。このギャップを埋めるアプローチとして、信号点配置自体を非一様に歪める幾何学的シェーピングと、均一グリッドを保ったまま外側の点の使用確率を下げる確率的シェーピング(PAS、マクスウェル・ボルツマン分布)の2つを扱い、いずれも実装上は1 dB前後のシェーピング利得を回収できることを確認しました。また、この利得が主に高SNR・帯域幅制限領域(近地球高速リンクや光通信)で効果を発揮し、深宇宙の電力制限領域ではその恩恵が限定的であることも見ました。
ここまで、私たちは1本のアンテナ・1本のRFチェーンを前提に、変調方式や信号点配置を洗練させることで通信路容量に迫る方法を追ってきました。しかし、送信側・受信側にアンテナを複数本用意できるなら、まったく別の次元の自由度が使えるようになります。次回は、この空間的な自由度を利用して信頼性やデータレートを高める時空間符号化とMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)基礎に軽く触れ、複数アンテナが切り拓く新しい設計空間の入り口を紹介します。
参考文献
- G. D. Forney Jr., L.-F. Wei, “Multidimensional Constellations—Part I: Introduction, Figures of Merit, and Generalized Cross Constellations,” IEEE Journal on Selected Areas in Communications, vol. 7, no. 6, 1989
- G. Böcherer, F. Steiner, P. Schulte, “Bandwidth Efficient and Rate-Matched Low-Density Parity-Check Coded Modulation,” IEEE Transactions on Communications, vol. 63, no. 12, 2015
- W. R. Bennett, “Spectra of Quantized Signals,” Bell System Technical Journal, vol. 27, 1948
- T. M. Cover, J. A. Thomas, Elements of Information Theory, 2nd ed., Wiley
- ETSI EN 302 307-2, Digital Video Broadcasting (DVB); Second Generation Framing Structure … Part 2: DVB-S2 Extensions (DVB-S2X)
- ETSI EN 302 755, Digital Video Broadcasting (DVB); Frame Structure Channel Coding and Modulation for a Second Generation Digital Terrestrial Television Broadcasting System (DVB-T2)
- J. G. Proakis, M. Salehi, Digital Communications, 5th ed., McGraw-Hill