ネットワーク・プロトコル#111

メガコンステレーション通信アーキテクチャ — 衛星群を1つのネットワークにする

数百〜数千機の低軌道衛星が衛星間リンクで結ばれるとき、個々のリンクの集合は1つの巨大な動的ネットワークになる。Walker constellationの規則性がもたらすネットワークトポロジ、ネットワーク直径のオーダー評価、ハンドオーバーに追従し続けるルーティングの課題、そして真空中伝搬が地上ファイバーより低遅延になりうる理由を数式で理解する。

前提知識: 衛星間リンク(ISL) — 1本の中継ホップから、多対多のメッシュへ

メガコンステレーションネットワークトポロジルーティングレイテンシStarlink

この回で学ぶこと

衛星間リンク(ISL)の回では、2機の衛星がレーザーやRFで直接リンクを結ぶという物理層の技術を扱いました。リンク幾何がどう変化するか、なぜレーザーが有利か、そして各衛星が同一軌道面内に2本・隣接軌道面間に2本という「+グリッド型トポロジ」でリンクを持つ、という設計思想までを見ました。

この回で扱うのは、その1本1本のISLを部品として、数百〜数千機規模の衛星群がどう1つの巨大な通信ネットワークとして機能するかという、一段上のレイヤーの問題です。個々のリンクがどれだけ優秀でも、それだけでは「ネットワーク」にはなりません。ある衛星から地球の反対側にいる別の衛星までデータを届けるには、途中の衛星群を何ホップ乗り継ぐ必要があるのか。衛星は絶えず軌道上を動いているため、最適な経路は刻一刻と変わり続けます。この「動的に組み替わり続けるトポロジの上で、どうやって効率よくデータを届けるか」というネットワークアーキテクチャ・ルーティングの問題が、この回の主題です。

具体的には、(1) 衛星の軌道配置(Walker constellation)が生むネットワークトポロジの規則性、(2) ネットワークの「直径」——送信元から宛先までの最大ホップ数——のオーダー評価、(3) 動的トポロジに追従し続けるルーティングという地上ネットワークにはない課題、そして(4) 真空中を伝搬する光・電波が地上の光ファイバーより速いという、メガコンステレーションならではのレイテンシ上の利点を、数式を追いながら見ていきます。

直感的導入: リンクの集合はまだネットワークではない

ISLの回の最後で見たように、+グリッド型トポロジのもとでは各衛星が4機の隣接衛星(同一軌道面内の前後2機、隣接軌道面の左右2機)と恒常的にリンクを結びます。これを衛星群全体で重ね合わせると、地球全体を覆う格子状のメッシュができあがる、というところまでは前回確認しました。

ここで視点を変えてみましょう。ある利用者端末が東京上空の衛星Aにデータを送りたいとき、その宛先がニューヨーク上空の衛星Zだったとします。AとZは直接リンクで結ばれてはいません。データはA→B→C→…→Zという経路を、途中の衛星のルーティングテーブルに従って何度もホップしながら進む必要があります。

これは地上のインターネットにおける「パケットがルータからルータへホップしながら宛先に届く」という発想とほぼ同じです。しかし決定的に違う点が1つあります。地上のルータは動きません。ルータAとルータBの間の物理的な配線(あるいは無線経路)は、故障や工事がない限り何年も変わらないままです。ところが低軌道の衛星は秒速7km前後で軌道を周回しており、ある瞬間に隣接軌道面のリンク相手だった衛星は、数分後には視野の外へ去り、別の衛星と新しくリンクを結び直さなければなりません。つまりネットワークの配線そのものが、絶え間なく組み替わり続けるのです。この回では、この「動く配線」の上に成り立つネットワークの設計原理を、まず静的な構造(トポロジ)の観点から、次に動的な変化(ルーティング)の観点から見ていきます。

Walker constellationとネットワークトポロジの規則性

メガコンステレーションの軌道配置は、多くの場合 Walker constellation と呼ばれる規則的なパラメータ化に従って設計されます。Walker constellationは、次の3つの整数パラメータで衛星群全体の配置を記述します。

Walker i:T/P/F\text{Walker } i: T/P/F
  • TT: 衛星の総数
  • PP: 軌道面の数
  • FF: 軌道面間の位相オフセット(隣接軌道面上の衛星が、真下の軌道面の衛星に対してどれだけ位相をずらして配置されるかを表す整数、0F<P0 \le F < P)
  • ii: 軌道傾斜角

各軌道面には S=T/PS = T/P 機の衛星が等間隔に配置され、同一軌道面内で隣接する衛星同士の中心角の間隔は Δϕ=360/S\Delta\phi = 360^\circ / S となります。たとえば T=1584, P=72, F=39T=1584,\ P=72,\ F=39 (Starlink第1世代シェルの一例に近い値)であれば、1つの軌道面あたり S=1584/72=22S = 1584/72 = 22 機の衛星が、Δϕ=360/2216.4\Delta\phi = 360^\circ/22 \approx 16.4^\circ 間隔で並びます。

このパラメータ化が重要なのは、単に軌道を美しく整列させるためではありません。軌道配置の規則性が、そのままネットワークトポロジの規則性に直結するからです。ISLの回で見た+グリッド型トポロジでは、各衛星が「同一軌道面内の前後」「隣接軌道面の左右」という決まった相手とリンクを結びます。Walker constellationのもとでは、この隣接関係が全ての衛星に対して一様に、周期的に定まります。すなわちネットワークを抽象化すると、PP 本の「列(軌道面)」と各列 SS 個の「行(軌道面内の位置)」からなる、**トーラス状の格子グラフ(グリッドグラフ)**として近似的にモデル化できます。

ネットワークグラフ格子グラフ(P×S),各ノードの次数4\text{ネットワークグラフ} \approx \text{格子グラフ}(P \times S), \qquad \text{各ノードの次数} \approx 4

この格子的な規則性は、ルーティングアルゴリズムの設計にとって大きな恩恵です。地上のインターネットのように任意のトポロジに対して経路表を都度計算・配布する(距離ベクトル型やリンクステート型のプロトコルを走らせる)必要が薄れ、「軌道面インデックスと軌道面内インデックスの差分から、進むべき方向(前後・左右)を単純な算術で決定できる」という幾何学的ルーティングが可能になります。これはメガコンステレーションのように多数のノードを持つネットワークにおいて、ルーティング計算の計算量とオーバーヘッドを大幅に下げる、実務上極めて重要な性質です。

ネットワーク直径のオーダー評価

ネットワークの**直径(diameter)**とは、グラフ上の任意の2ノード間の最短経路(ホップ数)のうち、最大のものを指します。メガコンステレーションのネットワーク設計において、直径は「最悪の場合、データが宛先に届くまでに何回リンクを乗り継ぐ必要があるか」という遅延・信頼性の両面に効いてくる重要な指標です。

P×SP \times S の格子グラフ(各ノードが上下左右の4ノードとリンクする)を考えます。衛星の総数を N=P×SN = P \times S とし、簡単のため PSNP \approx S \approx \sqrt{N} (軌道面数と面内衛星数がほぼ同程度)という典型的な設計を仮定しましょう。格子グラフ上で最も離れた2ノード(対角線上の両端に近いノード)へ到達するには、横方向に最大 P/2P/2 ホップ、縦方向に最大 S/2S/2 ホップが必要です(トーラス状であれば、周回して逆向きに進むことで最大距離は半周分に短縮されます)。マンハッタン距離の考え方から、

dmaxP2+S2N2+N2=Nd_{\max} \approx \frac{P}{2} + \frac{S}{2} \approx \frac{\sqrt{N}}{2} + \frac{\sqrt{N}}{2} = \sqrt{N}

すなわちネットワーク直径は

D(N)=O(N)D(N) = O(\sqrt{N})

というオーダーで増加します。これは直感的にも自然な結果です。NN 機の衛星を PNP \approx \sqrt{N} 本の軌道面に均等配置すれば、軌道面をまたぐ方向にも軌道面内の方向にも、移動すべき「格子の目」の数はおよそ N\sqrt{N} 個ずつで済みます。仮に全衛星を1本の軌道面に並べる(一次元的な配置)としたら直径は O(N)O(N) のオーダーになってしまうので、二次元格子(=複数の軌道面に分散配置する)という構造そのものが、直径を N\sqrt{N} のオーダーに抑える本質的な理由です。

具体的な数値で確認してみましょう。N1600N \approx 1600 機規模のコンステレーション(P40, S40P \approx 40,\ S \approx 40 程度)であれば、

D1600=40 ホップ程度(上限の目安)D \approx \sqrt{1600} = 40 \ \text{ホップ程度(上限の目安)}

実際には最短経路探索や、宛先までの相対的な位置関係(同じ半球内かどうかなど)によってこれよりずっと少ないホップ数で済むケースがほとんどですが、「衛星数が4倍に増えても、最大ホップ数は2倍にしかならない」という N\sqrt{N} のスケーリング則は、コンステレーションを大規模化する際の遅延設計において重要な指針になります。ノード数が線形に効いてこないという性質は、格子状トポロジを採用することの大きな利点です。

動的トポロジという地上ネットワークにはない課題

ISLの回で見たように、+グリッド型トポロジの4本のリンクのうち、同一軌道面内リンクは相対速度がほぼゼロで安定していますが、軌道面間リンクは相対位置が絶えず変化し、特に極域付近ではハンドオーバー(リンク相手の切り替え)が周期的に発生します。この回で強調したいのは、このハンドオーバーが単に「1本のリンクの相手が変わる」という局所的な現象にとどまらず、ネットワーク全体のルーティングテーブルを絶えず更新し続けなければならないという、より広い意味を持つという点です。

地上のインターネットでは、ルーティングテーブルは「リンク障害」「経路の混雑」など比較的まれなイベントに応じて更新されますが、その更新頻度は数秒〜数分オーダーで、ネットワークの物理的な配線自体は静的です。これに対しメガコンステレーションでは、軌道面間リンクのハンドオーバーが分オーダーで恒常的に発生し続けます。ある瞬間に最短だった経路A→B→C→Zが、数分後にはBとCの間のリンクがハンドオーバーで切断され、別の経路A→B→D→Zに切り替える必要が生じる、という更新が絶え間なく起こります。

この違いを定式化すると、ネットワークのトポロジ(隣接行列)を時間の関数として

G(t)=(V,E(t))\mathcal{G}(t) = \big(\mathcal{V}, \mathcal{E}(t)\big)

と書くとき、地上ネットワークでは E(t)E\mathcal{E}(t) \approx \mathcal{E} (ほぼ時不変)とみなせるのに対し、メガコンステレーションでは E(t)\mathcal{E}(t) が周期的に変化する**時間依存グラフ(time-varying graph)**として扱わざるを得ません。ただし前節で見た通り、Walker constellationの規則性のおかげで E(t)\mathcal{E}(t) の変化そのものは予測可能です。衛星の軌道は既知の軌道力学に従って決定論的に動くため、「いつどのリンクが切り替わるか」はあらかじめ計算しておくことができます。この予測可能性を活かし、実際のシステムでは、ハンドオーバーが起きるたびにゼロから経路探索をやり直すのではなく、あらかじめ計算しておいたスケジュールに沿って経路表を切り替えるという設計が採られます。これはDTNの回で扱った、接続が間欠的にしか得られない環境における「接続の予測可能性を活かしたルーティング」という発想と通底するものです。

さらに、ISLの回で見たリンク稼働率 ηlink=(TlinkTacq)/Tlink\eta_{link} = (T_{link}-T_{acq})/T_{link} を思い出すと、ハンドオーバーの瞬間には捕捉・追尾に要する時間 TacqT_{acq} だけリンクが一時的に使えなくなります。ネットワーク全体で見ると、ある瞬間に必ずどこかのリンクがハンドオーバー中で使用不能になっているため、ルーティングアルゴリズムは「現在使用可能なリンクの集合」を常に把握し、使用不能なリンクを迂回する経路を選び続ける必要があります。これは地上ネットワークの障害迂回(フェイルオーバー)に似ていますが、メガコンステレーションでは障害ではなく設計上必然的に、恒常的に発生するという点が本質的に異なります。

レイテンシの利点: 真空中の光は光ファイバーより速い

メガコンステレーション経由の通信が地上網に対して持つ、意外だが重要な利点があります。それは長距離通信において、衛星コンステレーション経由の方が地上の光ファイバー経由よりも低遅延になりうるという点です。

光ファイバー中を伝搬する光の速度は、真空中の光速 cc より遅くなります。これは光ファイバーのコア材料(通常は石英ガラス)の屈折率 nn による効果で、

vfiber=cnfiber,nfiber1.5v_{\text{fiber}} = \frac{c}{n_{\text{fiber}}}, \qquad n_{\text{fiber}} \approx 1.5

という関係にあります。c3.0×108c \approx 3.0 \times 10^8 m/s なので、光ファイバー中の伝搬速度はおよそ

vfiber3.0×1081.5=2.0×108 m/s0.67cv_{\text{fiber}} \approx \frac{3.0\times10^{8}}{1.5} = 2.0\times10^{8}\ \text{m/s} \approx 0.67c

つまり光ファイバー中の光は、真空中の光速のおよそ 2/3 程度の速度でしか進みません。一方、メガコンステレーションのISLは、ISLの回で確認した通り大気圏外の真空中を伝搬するため、その伝搬速度は理論上の上限である cc そのものです。この速度差だけを考えても、同じ距離を伝搬するのにかかる時間は

tfibertvacuum=cvfiber=nfiber1.5\frac{t_{\text{fiber}}}{t_{\text{vacuum}}} = \frac{c}{v_{\text{fiber}}} = n_{\text{fiber}} \approx 1.5

すなわち光ファイバーは、同じ直線距離を伝えるのに、真空中の伝搬よりも約1.5倍の時間を要します

しかもこれは伝搬速度だけの比較であり、実際の地上長距離通信ではさらに不利な要因が加わります。地上の光ファイバー網は、海底ケーブルの敷設可能なルートや、大陸を横断する陸上ケーブルの経路といった地理的制約により、大圏距離(2点間の最短距離)よりもかなり迂回した経路を通ることがほとんどです。これに対し衛星コンステレーション経由の経路は、前節までで見たネットワーク直径の範囲でホップを重ねるとはいえ、地表の起伏やケーブル敷設の制約を受けずに、幾何学的にはるかに直線に近い経路を取ることができます。

具体的な数値で見てみましょう。地球上の2地点間の距離を仮に D=10,000D = 10{,}000 km としたとき、伝搬遅延だけを単純比較すると、

tfiber=Dvfiber=1.0×1072.0×10850 mst_{\text{fiber}} = \frac{D}{v_{\text{fiber}}} = \frac{1.0\times10^{7}}{2.0\times10^{8}} \approx 50\ \text{ms} tvacuum=Dc=1.0×1073.0×10833 mst_{\text{vacuum}} = \frac{D}{c} = \frac{1.0\times10^{7}}{3.0\times10^{8}} \approx 33\ \text{ms}

この差(片道 約17ms、往復で約34ms)は、地上網の迂回距離や、経路上に存在する光増幅器・ルータでの処理遅延(1ホップあたり数msから数十ms加算されうる)を考慮すると、実際にはさらに拡大することが知られています。この「真空中伝搬 + より直線に近い経路」という2つの要因が組み合わさることで、長距離(特に大陸間規模)の通信では、衛星コンステレーション経由の方が地上ファイバー経由より低遅延になりうるという結果が導かれます。

なお、この利点は無条件に成立するわけではない点に注意が必要です。まず衛星への上り下りの伝搬遅延(ユーザ端末から衛星までの数百km区間、ISLの回で見たリンク距離のオーダー)や、本節前半で見たハンドオーバーに伴う遅延・輻輳が加算されるため、短距離通信では地上ファイバーの方が依然として有利です。この優位性が効いてくるのは、あくまで地上網の迂回距離が大きく、かつ衛星ネットワークの直線的な経路がその迂回を大きく上回る、長距離の通信区間においてのみである点を押さえておく必要があります。

実務での使われ方

Starlinkのネットワークアーキテクチャ

SpaceXのStarlinkは、ISLの回で見たレーザーISLを用いた+グリッド型に近いメッシュネットワークを、実際に大規模運用している代表例です。2024年前後に公開されたStarlinkの技術資料や第三者による計測研究では、レーザーメッシュを経由した長距離パケットが、地理的に離れたゲートウェイ間で地上の光ファイバー経由よりも低いラウンドトリップタイム(RTT)を記録する事例が報告されています。特に、既存の海底ケーブルの敷設が乏しい極域上空や、大圏距離に対して地上ケーブルが大きく迂回せざるを得ない航路(たとえば北極海周りの経路など)で、この優位性が顕著になるとされています。

Starlinkの地上インフラは、多数のゲートウェイ局(地上局)と、ネットワークトポロジの節で見たような格子状のISLメッシュとが組み合わさった構成を取ります。ユーザ端末からのトラフィックは、最寄りの衛星→(必要に応じて複数のISLホップ)→ゲートウェイが見える衛星→地上のゲートウェイ、という経路を通り、地上のバックボーンネットワークに接続されます。SpaceXは公表資料の中で、レーザークロスリンクを介したデータ転送によって、地上ゲートウェイの疎らな地域(洋上・極域など)でもサービスを提供できるとしており、これはISLの回の実務セクションで見た内容の延長線上にあります。

低遅延を価値とする応用: 金融取引

この回で導いたレイテンシの優位性が特に価値を持つ応用分野の1つが、高頻度取引(High-Frequency Trading, HFT)を含む金融取引です。証券取引所間のアービトラージ(裁定取引)では、他の取引参加者よりわずかでも早く価格情報を得て注文を出すことが直接的な収益につながるため、ミリ秒、時にはマイクロ秒単位のレイテンシ差が経済的な価値を持ちます。

実際、シカゴとニューヨークの取引所間、あるいはロンドンとフランクフルトの取引所間といった主要な金融ハブを結ぶ経路では、既にマイクロ波無線中継(空気中の伝搬速度がほぼ cc に近く、光ファイバーより速いことを利用した地上マイクロ波リンク)が高頻度取引業者によって専用に構築されてきた歴史があります。メガコンステレーションのレーザーISLは、この発想をさらに大陸間・全球規模に拡張するものと位置づけられ、複数の商用衛星通信事業者が金融業界向けの低遅延専用サービスの検討・提供を進めています。この回で見た D=O(N)D=O(\sqrt{N}) のホップ数と、ホップあたりの処理遅延・ハンドオーバーによる遅延変動(ジッター)をいかに小さく抑えるかが、こうした低遅延サービスの実現可能性を左右する設計上の鍵になります。

演習問題

  1. Walker constellation のパラメータが T=2000, P=50T=2000,\ P=50 であるとき、1軌道面あたりの衛星数 SS と、同一軌道面内で隣接する衛星同士の中心角間隔 Δϕ\Delta\phi を求めよ。

  2. N=2500N=2500 機の衛星が PS50P\approx S\approx 50 の格子状トポロジを組んでいるとする。本文の近似式 D(N)ND(N)\approx\sqrt{N} を用いて、ネットワーク直径(最大ホップ数の目安)を見積もれ。さらに、衛星数が N=10,000N=10{,}000 に増えた場合、直径は何倍になるか(オーダーの議論として)答えよ。

  3. 光ファイバーの屈折率を n=1.47n=1.47(実際のシングルモード光ファイバーに近い値)とし、地上2地点間の大圏距離が D=8000D=8000 km、地上ファイバー網の実際の敷設距離がその1.3倍(迂回率1.3)であるとする。(a) 地上ファイバー経由の伝搬遅延、(b) 衛星コンステレーション経由で大圏距離にほぼ等しい経路を取れたと仮定した場合の真空中伝搬遅延、をそれぞれ計算し、両者の差(ms)を求めよ。ただしユーザ端末⇔衛星間のアップ/ダウンリンク遅延やISLホップでの処理遅延は無視してよい。

  4. この回で見た「動的トポロジ」は、地上ネットワークの障害迂回(フェイルオーバー)と何が本質的に違うか。本文中の「予測可能性」というキーワードを用いて、DTNの回で学んだ発想との関連にも触れながら説明せよ。

まとめと次回予告

この回では、ISLの回で学んだ「2機の衛星を結ぶ物理層のリンク」を土台に、それらが集まって形成されるネットワーク全体のアーキテクチャを扱いました。Walker constellationの規則的な軌道配置が、格子状のネットワークトポロジと幾何学的ルーティングを可能にすること、そのトポロジのもとでネットワーク直径が O(N)O(\sqrt{N}) のオーダーに抑えられること、そして衛星が絶えず動き続けることで生じる動的トポロジという地上網にはない課題と、その予測可能性を活かした対処法を見ました。さらに、真空中伝搬が光ファイバーより本質的に速いという物理的事実が、長距離通信において衛星コンステレーション経由の低遅延性という定量的な優位性につながることを確認し、Starlinkの実例や金融取引という応用分野にも触れました。

次回は、こうした巨大かつ動的なネットワークを、地上のネットワークエンジニアがどう統合的に制御・管理しているのかという視点から、**宇宙向けソフトウェア定義ネットワーキング(Software-Defined Networking, SDN)**に軽く触れます。個々の衛星が自律的にルーティングを判断するのではなく、地上(あるいは軌道上)の集中的なコントローラがネットワーク全体の経路を最適化するという発想が、メガコンステレーションの運用にどう応用されつつあるのかを見ていきます。

参考文献

  • M. Handley, “Delay is Not an Option: Low Latency Routing in Space,” Proc. ACM HotNets
  • I. del Portillo, B. Cameron, E. Crawley, “A Technical Comparison of Three Low Earth Orbit Satellite Constellation Systems to Provide Global Broadband,” Acta Astronautica
  • J. G. Walker, “Satellite Constellations,” Journal of the British Interplanetary Society
  • SpaceX, Starlink 技術概要資料(レーザー衛星間通信・ネットワークアーキテクチャに関する公表情報)
  • CCSDS 141.0-B, Optical Communications Physical Layer
  • J. R. Wertz, D. F. Everett, J. J. Puschell (eds.), Space Mission Engineering: The New SMAD