測距・追跡#140
衝突回避運用の通信 — Conjunction Data Message(CDM)と衝突確率評価の数理
軌道上のデブリ・他衛星との接近が日常茶飯事になったメガコンステレーション時代、衝突回避の可否は限られた時間内の情報共有にかかっている。共分散楕円体の重なりから衝突確率を評価する数理と、CCSDS 508.0-BのConjunction Data Message(CDM)という専用フォーマットを、実際のマヌーバ意思決定プロセスとともに扱う。
前提知識: 航法データメッセージ標準 — CCSDS ODM/ADMによる軌道・姿勢情報の機関間交換
この回で学ぶこと
前回、軌道決定の結果である状態ベクトルとその共分散行列を機関間で受け渡すためのCCSDS標準フォーマット群(OPM・OEM・OMM)を学びました。その実務での使われ方を紹介した節で、**コンジャンクション評価(conjunction assessment、衝突回避のための接近評価)という用途に軽く触れ、そこで交換される専用メッセージとしてConjunction Data Message(CDM)**の名前だけを挙げました。この回では、その先を掘り下げます。
地球周回軌道上の物体数は、この10年ほどで様相を一変させました。かつては数千機の運用衛星と、それに付随する追跡可能なデブリ(サイズ10cm以上)を合わせて1万数千個程度が、米宇宙軍のカタログに載る全物体でした。しかし多数の小型衛星を一度に大量展開するメガコンステレーション(Starlink、OneWebなど、数千~数万機規模の衛星群)の登場により、低軌道(LEO)に存在する運用中の衛星数だけでも数万機規模に達し、カタログ化された物体の総数もそれに比例して増加し続けています。ある2物体の軌道が接近する事象(コンジャンクション)の発生頻度は、後で見るように物体数のほぼ2乗のオーダーで増えるため、この物体数の急増は、軌道上の衝突リスク評価という業務の負荷を劇的に押し上げています。
そして、この評価と意思決定を機関・事業者の垣根を越えて成立させているのが、前回学んだODM(Orbit Data Message)の考え方をそのまま衝突リスク情報に応用した、CDMという標準フォーマットです。今回は、(1) 2つの衛星の軌道不確かさから衝突確率を数式的にどう評価するか、(2) その評価結果をCDMという専用フォーマットがどう運ぶか、(3) 衝突確率がしきい値を超えたときに、限られた時間の中で関係機関がどう情報を共有し、回避マヌーバの実施を判断するのか、という3点を順に見ていきます。
直感的導入: 「ニアミス」は、位置がずれることと同じくらい「どれだけ自信があるか」の問題
2つの衛星が、ある時刻(最接近時刻、Time of Closest Approach、TCAと呼びます)にどれだけ近づくかを、軌道決定の結果から予測できたとします。予測された最接近距離(ミス・ディスタンス)が、たとえば500mだったとしましょう。これは衝突の危険が高いのでしょうか、それとも安全と言えるのでしょうか。
答えは「その500mという数字だけでは決まらない」です。カルマンフィルタの回で見たように、軌道決定の出力は状態ベクトルの点推定値だけでなく、その推定がどれだけ信頼できるかを表す誤差共分散行列 を必ず伴います。もし2つの衛星の軌道推定の不確かさ(共分散楕円体)がどちらも小さく、たとえば数十m程度の広がりしかないなら、500mのミス・ディスタンスは十分に安全な余裕と言えます。しかし、もし片方(あるいは両方)の衛星の軌道決定精度が悪く、共分散楕円体が数百mから1kmを超える広がりを持っているなら、「予測では500m離れている」という点推定は、実際には両者の不確かさの雲が大きく重なり合っていることを意味し、真の位置関係は500mよりずっと近い(あるいは衝突コースにある)可能性を否定できません。
つまり衝突回避運用における本質的な問いは、「2つの衛星は何m離れて通過する予定か」ではなく、「2つの衛星がそれぞれの不確かさの範囲内で実際に接触してしまう確率はどれくらいか」です。この確率——衝突確率(Probability of Collision, )——を、2つの共分散楕円体の重なり具合として定量的に評価する枠組みが、この回の数理の中心になります。
衝突確率の定式化
3次元問題を2次元に落とす: 遭遇平面(B-plane)への射影
まず、なぜ3次元の共分散楕円体の重なりという一見複雑な問題が、実務では2次元問題として扱われるのかを見ておきます。
2つの衛星の相対位置ベクトル は、TCA付近では相対速度ベクトル (典型的には低軌道どうしの逆行に近い交差軌道で、秒速10km程度、時速に直すと数万km/hに達することもあります)にほぼ沿って直線的に変化します。ここで鍵になるのは、相対速度の方向に沿った位置の不確かさは、衝突するかどうかにはほとんど影響しないという観察です。相対速度方向にどれだけ位置がずれていても、それは「最接近が予定より少し早く/遅く起きる」という時刻のずれを生むだけで、最接近時に両者がどれだけ物理的に近づくか(ミス・ディスタンスの大きさ)そのものにはほとんど効いてきません。
そこで、相対速度ベクトル に垂直な平面——遭遇平面(encounter plane)、しばしばB-planeとも呼ばれます——を定義し、そこに正規直交基底 を張ります。射影行列を
とすると、TCAにおける相対位置(ミス・ベクトル)の平面内成分は となります。この射影によって、本来3次元だった不確かさの評価が、遭遇平面上の2次元問題に帰着します。これはAkella & Alfriend(2000)やFoster & Estes(1992)によって定式化された、コンジャンクション評価の標準的な近似です。
結合共分散と衝突確率の積分表現
各衛星の軌道決定から得られる誤差共分散行列を (ともに前回のOPMの COV_START/COV_STOP ブロックや、カルマンフィルタの回で見た更新後共分散 に相当するものを、TCA時刻まで伝播した値)とします。2機の軌道決定誤差が統計的に独立であると仮定すると(異なる地上局・異なる観測データ・異なる運用チームによる独立な推定であることが多いため、この仮定は実務上妥当とされています)、相対位置の不確かさを表す結合共分散行列は単純な和になります。
これを遭遇平面に射影した2×2の共分散行列は
です。さらに、2つの物体を半径 の球体で近似し(太陽電池パドルなどの張り出しを含めた実効半径を用いるのが通例です)、結合ハードボディ半径を と定義すると、衝突とは「遭遇平面上で相対位置が原点(=2物体の中心が一致する状態)から半径 の円内に入ること」に対応します。ミス・ベクトル を平均、 を共分散とする2次元ガウス分布
を使えば、衝突確率は次の2次元積分として厳密に定義されます。
この積分は一般に閉じた形(初等関数)では書けません。実務では、Foster(1992)が提案した級数展開による準解析的な計算法や、直接の数値求積が使われます。これがFoster法と呼ばれ、多くのコンジャンクション評価システム(米宇宙軍、NASA CARA、商用SSA事業者)で標準的に採用されているアルゴリズムです。
小ハードボディ半径近似 — 直感を得るための簡略式
数値積分に頼らずとも、 が遭遇平面上の不確かさの広がり(標準偏差)に比べて十分小さい場合には、簡単な近似式で衝突確率の桁数を見積もることができます。共分散行列 を主軸方向に対角化し、その主軸方向の標準偏差を 、その座標系でのミス・ベクトル成分を とすると、 のとき、積分範囲(半径 の円)の中で密度関数 はほぼ一定とみなせるため、
という近似式が得られます。この式から読み取れる定性的な性質は重要です。ミス・ベクトルの大きさ が同じでも、共分散が小さい(軌道決定精度が良い)ほど指数関数の減衰が急になり は小さくなります。逆に軌道決定精度が悪化して が大きくなると、指数部の減衰が緩やかになるだけでなく係数 自体も小さくなるため、皮肉なことに「軌道推定精度が非常に悪い」場合には がかえって小さく計算されてしまうという、コンジャンクション評価の実務者がよく注意する落とし穴がここに現れます(不確かさが大きすぎて、衝突する狭い領域に「たまたま」当たる確率自体が薄まってしまうためです)。このため実務のシステムでは、共分散が異常に大きい(=軌道情報の質が低い)場合には の値だけでなく、その信頼性そのものを別途フラグ立てして扱います。
Conjunction Data Message(CDM)の構造
CDM(CCSDS 508.0-B)は、いま定式化した衝突確率評価に必要な入力(2機それぞれの状態ベクトルと共分散)と、評価済みの出力(ミス・ディスタンス、相対速度、衝突確率)の両方を、前回のOPMと同じKVN(Keyword Value Notation)で1つのメッセージにまとめたものです。ヘッダとRelative Metadata/Dataブロックに続き、OBJECT1(通常は情報の受信者、すなわちCDMを受け取って判断を下す運用者の衛星)とOBJECT2(接近相手の物体、しばしばデブリや他社の衛星)という2つのオブジェクトブロックが並ぶ構造です。
CCSDS_CDM_VERS = 1.0
CREATION_DATE = 2026-07-15T08:00:00.000Z
ORIGINATOR = 18 SDS
MESSAGE_ID = CDM_2026198_00142
TCA = 2026-07-17T14:32:07.512
MISS_DISTANCE = 620.4 [m]
RELATIVE_SPEED = 14230.6 [m/s]
RELATIVE_POSITION_R = 410.2 [m]
RELATIVE_POSITION_T = -401.8 [m]
RELATIVE_POSITION_N = 180.1 [m]
COLLISION_PROBABILITY = 1.85e-04
COLLISION_PROBABILITY_METHOD = FOSTER-1992
OBJECT = OBJECT1
OBJECT_DESIGNATOR = 2019-001A
CATALOG_NAME = SATCAT
OBJECT_NAME = EXAMPLE-SC-A
OBJECT_TYPE = PAYLOAD
MANEUVERABLE = YES
REF_FRAME = RTN
COVARIANCE_METHOD = CALCULATED
X = 6771.234 [km]
Y = 0.000 [km]
Z = 0.000 [km]
X_DOT = 0.000 [km/s]
Y_DOT = 7.612 [km/s]
Z_DOT = 0.031 [km/s]
CR_R = 1.20e-02
CT_R = 3.10e-03
CT_T = 4.55e-01
CN_R = 2.00e-05
CN_T = 1.10e-04
CN_N = 9.80e-03
OBJECT = OBJECT2
OBJECT_DESIGNATOR = 44821
CATALOG_NAME = SATCAT
OBJECT_NAME = DEBRIS FRAGMENT
OBJECT_TYPE = DEBRIS
MANEUVERABLE = NO
REF_FRAME = RTN
COVARIANCE_METHOD = CALCULATED
X = 6771.541 [km]
...
前回のOPMと見比べると、共通する設計思想と、いくつかの重要な違いの両方が見えてきます。
共通する設計思想は、状態ベクトルと共分散行列の両方を、座標系・時刻系のメタデータとともに機械可読な形で運ぶという点です。ここでもし共分散の単位や基準系の解釈がずれれば、前回で見たMars Climate Orbiterの教訓がそのまま再現され、計算される の値自体が信用できなくなってしまいます。
違いとして特筆すべきは、CDMの共分散行列が多くの場合 REF_FRAME = RTN、すなわち各物体の軌道に沿った動径・進行(along-track)・法線(cross-track)方向(Radial-Transverse-Normal、RTN系)で表現される点です。前回のOPMが慣性系(EME2000)を基本としていたのに対し、CDMがRTN系を使うのは、コンジャンクション評価の実務において「どの方向の誤差が特に大きいか」(一般に進行方向の誤差が動径・法線方向より大きく育ちやすい)を直感的に把握しやすいためです。またCDMには MANEUVERABLE(その物体が能動的に軌道変更できるか)というフィールドがあり、これは意思決定において極めて重要な情報です。デブリや運用終了機は回避マヌーバを打てないため、両者が接近した場合は必然的に相手が動ける側(あるいは第三者)が回避責任を負うことになります。
衝突回避マヌーバの意思決定と通信の即時性
が計算され、CDMとして関係する衛星運用者に届いたあと、実際に回避マヌーバを実施するかどうかの判断は、限られた時間の中で下さなければなりません。典型的な意思決定プロセスは次のような時間軸で進みます。
- 数日前(スクリーニング): 監視機関(後述)が全カタログ物体どうしの軌道を突き合わせ、ある閾値(ミス・ディスタンスや の初期スクリーニング条件)を超える接近ペアを検出し、最初のCDMを発行します。この時点では軌道情報がTCAからまだ時間的に遠く、共分散が伝播によって大きく広がっているため、 の値そのものはまだ不確実性が大きいのが通例です。
- 数時間~1日前(更新): 新しい追跡観測(レーダー、光学、あるいは対象衛星自身のGNSS航法データ)が得られるたびに軌道決定が更新され、より精度の高い状態ベクトルと(通常はより小さくなった)共分散を反映した更新版CDMが再発行されます。TCAに近づくほど共分散の伝播時間が短くなるため、一般に の推定はTCAに近いほど確度が上がります。
- マヌーバ実施の判断: 更新された が運用者の定めるしきい値(次節で具体的な値に触れます)を超え続ける場合、回避マヌーバの実施が決定されます。ここで通信の即時性が本質的に効いてきます。マヌーバには、(a) 新しい軌道を計算し直す時間、(b) 地上局から探査機・衛星にコマンドを送るための可視パスの確保、(c) マヌーバ後の新しい軌道が「別の物体との新たな接近」を生まないことの再確認、(d) 場合によっては相手側運用者への通知——という一連の作業が必要で、これをTCAより十分前の、限られた時間窓の中で完了させなければなりません。マヌーバの実施が遅れれば遅れるほど、燃料コストの大きい大きな軌道変更が必要になったり、最悪の場合は判断が間に合わなくなったりします。
この意思決定プロセス全体が機能するかどうかは、結局のところ「関係機関・関係事業者のあいだで、CDMという標準化された情報が、必要な頻度で、必要な速さで届き続けるか」にかかっています。前回の言葉を借りれば、ここでもODM/CDMという標準フォーマットが、機関ごとに異なる軌道力学ソフトウェア・異なる運用体制の違いを吸収し、「答え合わせのための変換作業」に時間を取られることなく、意思決定そのものに時間を使えるようにしているのです。
実務での使われ方
米宇宙軍 第18宇宙防衛飛行隊(18th Space Defense Squadron)によるスクリーニングサービス
米宇宙軍の第18宇宙防衛飛行隊(18th Space Defense Squadron, 18 SDS)(かつては第18宇宙管制飛行隊、18 SPCSと呼ばれていました)は、地上レーダー・光学望遠鏡のネットワーク(Space Surveillance Network)で追跡した軌道上の全カタログ物体(2020年代半ばの時点で、10cm程度以上のサイズを持つ物体だけでも数万個規模がカタログ化されています)について、日常的にすべてのペアの組み合わせをスクリーニングし、接近が検出されたペアに対してCDMを発行しています。この情報はspace-track.orgを通じて、登録した衛星運用者に配信されます。物体数が のとき、全ペアの組み合わせ数は のオーダーで増えるため、メガコンステレーションによる物体数の急増は、スクリーニング計算量そのものを圧迫する要因にもなっています。
商用SSA(宇宙状況把握)サービス
政府機関のスクリーニングに加えて、商用の**SSA(Space Situational Awareness)**事業者が独自の追跡網によるコンジャンクション評価サービスを提供しています。LeoLabsは独自運用のフェーズドアレイレーダー網によって低軌道の物体を高頻度に追跡し、より短い更新間隔でのコンジャンクション評価・アラートを衛星運用者に提供しています。ExoAnalytic Solutionsは世界各地に展開した光学望遠鏡網による軌道追跡を強みとし、COMSPOC(旧AGI)も含め、複数の商用事業者が政府機関のスクリーニングを補完・検証する形でCDM相当の情報を運用者に届けています。これらの事業者間・事業者と衛星運用者間のデータ共有でも、CCSDSのCDM形式との親和性を持たせた出力が広く採用されており、前回で見たSpace Data Association(SDA)を通じた事業者間の直接連絡とあわせて、複層的な情報共有網が構築されています。
意思決定のしきい値と実施頻度
回避マヌーバを実施するかどうかの しきい値は運用者ごとに異なりますが、NASAの衝突回避リスク分析チーム(CARA、Conjunction Assessment Risk Analysis)をはじめ多くの機関で、 程度を「対応(赤)」、 程度を「注視(黄)」とする段階的なしきい値運用が一般的です。国際宇宙ステーション(ISS)では、幅・奥行き数km、進行方向に数十km程度の直方体状のスクリーニング領域(俗に「ピザボックス」と呼ばれます)に他物体が進入し、かつ がしきい値を超えた場合に、デブリ回避マヌーバ(DAM, Debris Avoidance Maneuver)の実施が検討されます。
近年のメガコンステレーションでは、回避マヌーバの実施件数そのものが劇的に増加しています。SpaceXは2023年のFCC(米連邦通信委員会)向け報告の中で、Starlink衛星群全体として2022年12月から2023年5月までの約半年間に、およそ2万6千回の衝突回避マヌーバを実施したと報告しています。1機あたりで見れば頻度は低くとも、数千機規模の衛星群全体では、こうした自動化された(多くの場合、しきい値超過を検知すると自動的に低推力スラスタで軌道を微調整する)回避マヌーバが常時発生し続けているのが、メガコンステレーション時代の日常的な運用実態です。この規模の運用は、CDMのような標準化された情報を機械的に処理し、人手を介さずに判断・実行できる自動化パイプラインなしには成立しません。
演習問題
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遭遇平面上の結合共分散が主軸方向に対角化されており m、 m、ミス・ベクトルの主軸成分が m、 m、結合ハードボディ半径 mであるとします。本文の小ハードボディ半径近似式を使って衝突確率 を計算してください。この値は本文で挙げた「対応(赤)」しきい値 を超えるでしょうか。
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本文では、なぜ相対速度方向の位置の不確かさを無視して3次元問題を2次元(遭遇平面)問題に帰着できるのかを説明しました。この近似が成り立たなくなる(=相対速度方向の不確かさも無視できなくなる)のは、どのような軌道配置のときだと考えられますか。相対速度の大きさという観点から自分の言葉で説明してください(ヒント: 2機がほぼ同じ軌道を追従して飛行している、いわゆる編隊飛行やランデブー間近の低相対速度の状況を考えてみてください)。
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小ハードボディ半径近似式 について、ミス・ベクトルの大きさを固定したまま を両方とも2倍に(すなわち軌道決定精度が半分に悪化)した場合、 の近似値はどう変化するか、指数部と係数部それぞれへの影響を分けて論じてください。この結果は、本文で触れた「不確かさが大きすぎると がかえって小さく計算される」という落とし穴とどうつながっているか説明してください。
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カタログ化された軌道上物体数が 個から 個に倍増したとき、全ペアの組み合わせ数 はおおよそ何倍になりますか。この関係を踏まえて、メガコンステレーションによる物体数の急増が、前回で学んだ「標準化されたメッセージ形式による機関間交換」の重要性をどのように一層高めているかを、スクリーニング計算量と情報共有コストの両面から説明してください。
まとめと次回予告
この回では、前回で軽く触れたCDMを深掘りし、2つの衛星の軌道不確かさ(共分散)から、遭遇平面への射影と2次元ガウス積分によって衝突確率 を評価する枠組みを数式で追いました。そのうえで、この評価結果と入力データの両方をCCSDS標準形式で運ぶ**Conjunction Data Message(CDM、CCSDS 508.0-B)**の構造を、OPMとの共通点・相違点とともに整理し、 がしきい値を超えたときに関係機関がどのような時間軸で情報共有と回避マヌーバの意思決定を進めるかを見ました。実務では、米宇宙軍18 SDSによる全カタログスクリーニングと、LeoLabsなど商用SSA事業者による補完的な追跡サービスが両輪となり、メガコンステレーション時代の急増する接近事象に対応していることも確認しました。
これまで2回にわたって、軌道決定の結果(ODM)と衝突リスク情報(CDM)という、いわば「離れた2機の関係」を扱う通信を見てきました。次回は視点を変えて、ランデブー・ドッキングや編隊飛行のように、衛星どうしが意図的にごく近い距離まで接近し、互いを積極的に追跡し合う近傍運用における相対追跡技術に軽く触れます。今回学んだ「独立に求めた2機の絶対軌道の差」としてのコンジャンクション評価とは異なり、近傍運用では相手の相対位置・相対姿勢そのものを直接センシングする、まったく異なる通信・センサ融合の枠組みが必要になることを見ていきます。
参考文献
- CCSDS 508.0-B-1, Conjunction Data Message
- CCSDS 502.0-B-3, Orbit Data Messages
- J. L. Foster and H. S. Estes, “A Parametric Analysis of Orbital Debris Collision Probability and Maneuver Rate for Space Vehicles,” NASA/JSC-25898, 1992
- M. R. Akella and K. T. Alfriend, “Probability of Collision Between Space Objects,” Journal of Guidance, Control, and Dynamics, Vol. 23, No. 5, 2000
- S. Alfano, “A Numerical Implementation of Spherical Object Collision Probability,” The Journal of the Astronautical Sciences, Vol. 53, No. 1, 2005
- H. Klinkrad, Space Debris: Models and Risk Analysis, Springer-Praxis, 2006
- NASA, Conjunction Assessment Risk Analysis (CARA) Program, NASA Goddard Space Flight Center
- SpaceX, Space Exploration Holdings, LLC Technical Attachment, FCC Filing (Starlink Gen2 Order), 2023